こころの病があっても、自分らしく生きるために

こころの病があっても、自分らしく生きるために

パーソナルリカバリーとは

パーソナルリカバリーとは、精神障害のある人が「そのままの自分でいいんだ」と自分らしく生きていくための回復のステップです。発達障害やうつ病、統合失調症などの病気がある人の中には、症状が改善して普通の生活ができる人もいれば、再発したり症状が残ったりする人もいます。医療従事者は病気を治そう、症状をなくそうと努めますが、精神障害とともに生きていく人にとっては、症状を軽減しようとする医療だけではつらくなることがあるのです。精神障害があっても希望を失わずに自分らしく生きること、そのための支援が重視され始めています。

入院しても

精神症状が改善すると、パーソナルリカバリーも改善するという研究報告があります。入院して集中的に治療を受けると精神症状はぐんと改善することが多いため、「入院するとパーソナルリカバリーも改善する」という仮説のもとで、変化の調査が行われました。すると予想に反して改善が見られませんでした。精神科の入院は自傷を防ぐための医療保護入院や、家族の要望などによる社会的入院が多く、「本人が入院を希望していない」ことが影響している可能性があります。また結果を分析したところ、「誰かの役にたっている」という自己効力感がある人は、パーソナルリカバリーが高いことがわかりました。

共生社会への期待

日本は今、精神障害のある人が世界でもっとも多く入院している国だと言われています。世界的には精神障害のある人も、外来で治療を受けながら社会の中で暮らすことが増えており、日本もそうしていく方針です。障害のある人とその家族、地域の人々がともに精神障害やパーソナルリカバリーについて学ぶ「リカバリーカレッジ」という市民講座のような場もできています。障害のある人が、自分の経験などを話すことで自己効力感を高め、また障害のある人とない人とがお互いを知ることで、誰もが尊厳を持って暮らせる共生社会になっていくことが期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東北福祉大学 健康科学部 保健看護学科 准教授 光永 憲香 先生

東北福祉大学健康科学部 保健看護学科 准教授光永 憲香 先生

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精神看護学

先生が目指すSDGs

メッセージ

大学で何を学びたいか、将来どんな職業に就きたいか、進路を決めるのは簡単ではありません。高校時代の私は部活一筋で、受験に失敗しました。一浪して進学したのち、やっぱり人に関わることが好きで、そういう仕事がしたいと看護学部に入り直したので、進路が定まるまでにずいぶん遠回りをしています。でも、失敗したからこそ自分が心から面白いと感じる道に進めました。高校時代には、自分はどんな人間かを知ることが大切です。まずは自分が面白いと感じること、心がときめくことを探してみてください。

東北福祉大学に関心を持ったあなたは

東北福祉大学は、「行学一如」(理論と実践の融合)を建学の精神に掲げ、SDGsや地域共生社会の実現に貢献する人材の育成に努めています。本学は福祉・心理・行政・経営・教育・看護・リハビリ・医療事務が学べる4学部8学科の幅広い学びを擁する全国有数の福祉系大学です。キャンパス内には、特別養護老人ホームや保育園、幼稚園、附属病院などがあり、学生の実習やボランティア活動の場にもなっています。大学で学んだ知識を、現場で実践することにより、実践力及び考察する力・理論化する力を兼ね備えた人材の育成をめざします。