睡眠測定最前線! ベッドの下に置くだけで看護の負担も軽減へ

精神科病棟での「眠り」の重要性と課題
精神科病棟に入院している患者の治療において、睡眠の時間や質は非常に重要とされています。その睡眠時間、寝つくまでの時間、睡眠の深さなどを正確に測定できる「ポリソムノグラフィー(PSG)」という優れた装置があります。しかし、PSGは脳波計や心電図などの多くのセンサーを患者の体に装着する必要があり、特に認知症や精神疾患を持つ患者にとっては負担が大きく、正確に睡眠を把握するのが困難なのです。装着の煩わしさ以外に、専用の検査室で眠る必要があるためいつもの睡眠を観察することは意外に難しいものです。特に、認知症や精神疾患を持つ患者はケーブルを外してしまったり、センサーに過剰に不安を感じたりすることもあります。このような理由から、精神科病棟ではPSGを使用して睡眠を観察することには限界があります。
「眠りSCAN」がもたらす革新
この課題を解決するため、「眠りSCAN」という非接触型のセンサーを用いた研究が行われています。この計測器はマットレスの下に設置するだけで、患者のベッド上での動きから睡眠を測定できます。しかし、研究の第一段階でこのセンサーによる計測は、認知症やうつ病などの精神疾患を持つ患者を対象にすると誤差が大きくなることがわかりました。この誤差を少なくするために、患者の病歴、年齢、体重、薬の服用状況などの特性を反映した計算式が開発されました。これにより、精神疾患を持つ患者に対しても正確な睡眠データを得やすくなりました。
正確な睡眠データが変える診療と看護
「眠りSCAN」を活用した研究の成果が実用化すれば、将来的には、睡眠データを診療記録やカルテと連携させて、より詳細な患者の状態把握が可能になります。例えば特定の日に寝つきが悪かった場合、その原因を食事や服薬状況から探り、予防的なアプローチが取れるようになるでしょう。その成果は薬の調整など診断に生かされるだけでなく、夜間の見回りの負担が軽減されるなど、看護面でのメリットも期待されています。
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