「良いこと」ばかり書いてある作文を疑ってみよう!
「良いこと」ばかり書かれた作文の落とし穴
学校では、「作文」の学習があります。生徒が書いた作文を読むと「楽しかったです」「勉強になりました」「ぜひ○○してみたいです」「感動しました」などの良いことがたくさん書かれています。でもこれらの文章は褒められることを意識して書いたのか、残念ながら心があまり伴っていません。そんな書き方を繰り返していくと、こういう書き方でいいんだという感覚を持つようになります。生徒の多くは自分の思いをまだうまく言葉にできないので、そのような作文を続けていると、自分の思いや感情を言葉にすることができないままになってしまいます。
感じたままを書いていく
そこで、自分の思いを言葉にするトレーニングになるのが、「からだメタ認知」の理論を使った作文です。「からだメタ認知」とは、自分がその場で感じていることをどんどん言葉にしていくことです。この理論を使った作文では、例えば「椅子の座り心地が悪い」「何を書いたらいいかわからない」など、頭に浮かんだことをそのまま書きます。自分の中にあるもやもやした思いを言葉に表現することに意味があるので、ほかの人からの評価を得るための文章でなくて構いません。ある中学校では、乱暴な行為が多かった生徒が「からだメタ認知」作文を書くことによって落ち着きを取り戻し、作文も苦手でなくなったという事例があります。自分の中にあるものをどんどん言葉にして表に出せる生徒は、自然に文章が書けるようになります。
自分事を大切に、言葉の力を育む
もう一つ、作文で大切なのが、いろいろな事象を「自分事」としてとらえることです。「自分事」とは具体的に言うと、例えば「環境が破壊されている」という抽象的な説明文を読んだ時に、その様子がありありと思い浮かべられることです。「自分事」としてとらえることができると、しっかりと心の伴った文章が書けるようになります。
国語教育の現場では、心と体で感じていることを言葉にする訓練がもっと必要です。それが「言葉の力」を育むことになるからです。
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