必要なのは特技と「縁」? ソーシャルワークでまちづくりを考える
まちづくりとソーシャルワーク
福祉の分野では、誰もが自分らしく安心して暮らせる「地域共生社会」実現に向けた取り組みが注目を集めています。行政はもちろん、住民も主体となってまちづくりに参加すれば、めざす地域共生社会はできあがるでしょう。その過程で応用できるのが、ソーシャルワークの観点です。ソーシャルワークでは、困難を抱えた人を「助けすぎないこと」が大切だと考えられています。例えば介護で、生活のすべてを助けてしまうと、要介護者に残っているさまざまな力を奪ってしまう可能性があります。本人の主体性や得意なことを発揮できる環境があれば、その人は生き生きと暮らせるはずです。この考え方をまちづくりにも取り入れようと、研究が始まりました。
住民が特技を持ち寄る
事例の一つが、ある地域での廃校を活用した交流拠点づくりです。子育て世代の住民も訪れやすくするようキッズスペースを設けることになりましたが、そのための予算がありません。すると元大工の住民が「自分に任せろ」と手を挙げ、廃材などを活用してキッズスペースをつくったのです。ほかにも裁縫などの特技を生かす住民が次々と参加して足りない物品を補い、交流拠点は完成しました。
縁で課題を解決
課題があれば、まずはお金の「円」ではなく人との「縁」で解決することも、地域共生社会の実現には大切です。お金を使えば誰にも迷惑をかけずに課題を解決できるかもしれませんが、人とつながりは生まれません。
例えば住民が「廃校にある卓球台を使わせてほしい」と、行政に要望を出した事例がありました。このとき行政が「卓球台は壊れていますが新品を買うお金がないので、修理できる人を探してください」と答えると、その住民は心当たりのある人に声をかけて要望を実現させました。住民が主体的に動けば、新たな出会いや、人とのつながりも生まれるのです。今後もソーシャルワークの知見を踏まえて、住民の持つ能力や人脈を尊重したまちづくりを広めていこうと、研究が進められています。
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北海道教育大学 教育学部 国際地域学科(函館校) 教授 齋藤 征人 先生
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