ただの糸じゃないDNA! ウニの発生から学ぶ遺伝子発現
ウニの発生は遺伝子で決まる
ウニはヒトと同じ「新口動物」というグループで、見た目はまったく似ていませんが、実はヒトと近縁な生きものなのです。ウニの研究からはヒトに関係する発見が得られる可能性があるのです。
ウニの発生はとてもダイナミックな現象で、その過程は遺伝子のはたらきで制御されています。そのしくみを探るために、ゲノム編集などのさまざまな手法が使われています。
DNAはただのまっすぐな糸じゃない!
DNAが二重らせん構造なのは有名なお話です。ところが、DNAはただの二重らせんの糸ではなく、実はもっと柔軟でいろいろな形に変化できるのです。このようなただの二重らせんでない構造を形成できる配列が、遺伝子の中にはたくさんあります。
また、DNA上にはたくさんの遺伝子が並んで配置されています。そして、隣り合う遺伝子が互いに干渉しないように、遺伝子と遺伝子の間にはインスレーターと呼ばれる仕切りがあります。ウニの発生に関わる遺伝子の発現で、このようなDNAの性質がどのように作用するのかを明らかにするために、研究が続いています。
ウニの細胞核は劇的に変化する!
細胞分裂をするためにはDNAを一度複製し、核を解体してDNAを娘細胞に分配し、核を元の形に戻す、という工程が必要です。めまぐるしく細胞分裂がおこなわれるウニの発生で、なぜ遺伝子は正常に発現するのでしょうか。その手がかりを求めて、遺伝子の「位置」を調べています。
「初期型ヒストン遺伝子」を蛍光色に染めて、核のどこで働いているのか分析が行われました。ヒストンはDNAを巻き付ける「糸巻き」の役割を果たします。細胞分裂のたびに大量に必要となるヒストンを発現しているのが初期型ヒストン遺伝子です。分析の結果、初期型ヒストン遺伝子は、発現が活発な時期には核の内側で一カ所に固まり、発現が終わると4セットに分かれて中心から離れた位置に移動していたのです。位置の違いが遺伝子の発現をどう制御しているのかなどを明らかにするために、研究が続いています。
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広島大学 理学部 生物科学科 准教授 坂本 尚昭 先生
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