野生動物を観る 生物どうしのつながりを見つけよう
生物どうしのつながり
野生動物は互いにつながり、関わり合って生きています。そのつながりを詳しく知ることで、生態系の中のあらゆる生物の位置づけや、生物が果たしている役割を知ることができます。
生物どうしのつながりには人間も含まれます。ヒトがどのようにして野生動物と関わるのか、同じ地球に生きるもの同士で考えなければなりません。生物どうしのつながりを調べることは、ヒトを含めた生態系を構成する生物のことを把握し、その働きを知るうえでもとても大切な課題のひとつです。
生物どうしのつながりを調べる
野生動物の行動観察には、直接観察と間接観察があります。ほとんどの野生動物では間接観察方法が用いられます。
間接観察で実際にどのようにして野生動物の研究がおこなわれているのか紹介します。ひとつめは、残された手がかりを探す方法です。手がかりには、糞、食痕、爪跡、足跡、体毛、におい、巣などの痕跡が含まれます。ふたつめは、追いかける方法です。直接後を追うことができない動物の場合は、発信機の音を頼りに動物がいる場所を推定するテレメトリー法を用います。最後は、センサーカメラを通して野生動物を観察する方法です。
生物どうしのつながりから生態系へ
動物による種子散布の研究例を紹介します。
地面で発芽せずに、木の上で発芽して地面に向かって根を下ろす植物がいます。その植物は、イチジクの仲間です。世界にはなんと700種以上もイチジクがあります。木の上で発芽するのは、そのうちの半着生型のイチジクです。半着生イチジクの種子を木の上に運搬できるのは、木に登ることができたり、飛ぶことができる動物に限られます。ボルネオ島でこの条件を満たす3種の動物(ビントロング、テナガザル、サイチョウ)がどこに種子を散布するのかを観察しました。
その結果、半着生イチジクの実生があった環境ともっともよく似た環境に糞をするのは、ビントロングでした。イチジクの種子散布の研究をとおしてビントロングの生態系での役割がわかります。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 総合科学部 総合科学科 准教授 中林 雅 先生
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生態学、動物行動学、熱帯生態学先生が目指すSDGs
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