ウミガメを守りながらサカナを捕る! 生態系に配慮した漁業をめざして
海洋生物と人との共生をめざす海のSDGs
海の希少生物であるウミガメをいかに守るかは、国際的な課題です。漁業において、目的とは異なる種が捕獲されることを「混獲」と言い、ウミガメが命を落とす一因となっています。それならウミガメの生息域での漁業をやめればいいのかというと、そんな単純な問題ではありません。漁業は人間にとって大切な産業です。生態系に配慮した漁業をめざして、海の生き物と人との共生について考える、海のSDGs(持続可能な開発目標)の研究が進んでいます。
ウミガメの生態と漁業の仕組みを理解する
研究では海洋生物と漁業の両方を理解することが求められます。まずウミガメをはじめとする海の生き物について、行動や回遊ルートなど、生態や習性を知ることが必要です。漁業についても、魚を捕る方法や道具の仕組み、漁場に精通する必要があります。これらの知識を総動員して、混獲を防ぐ方法を考えるのです。
これまでに、ウミガメがかかりにくく致命傷も与えにくい釣針の開発と普及が図られてきました。また、餌に何度もかぶりつくというウミガメの習性を生かし、イワシなどの針から落ちやすい餌を選ぶと混獲が減少することがわかってきました。こうした知見も参考にしながら、マグロとウミガメの生息深度の違いに着目して混獲を避ける方法や、呼吸の習性を利用してウミガメだけが網から脱出できる装置の開発などを進めています。
漁師とともに! 生態系に配慮した漁業の実現へ
ウミガメは砂浜で産卵しますが、産卵数の減少から個体数が減少していると考えられている種があり、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにも指定されています。海の恵みは、豊かな生態系のもとでもたらされるものです。さまざまな立場の人々が協働し、生態系に配慮しながら資源を持続的に利用していくという同じ目的に向かうことが大切です。そのために、現場の漁業者から情報を得ることも欠かせません。生態系に配慮した漁業の研究は、地球の未来を担う研究でもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋生命科学部 海洋生物資源学科 教授 塩出 大輔 先生
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