講義No.13700 看護学

名前のない困難に寄り添う 地域の健康を支える保健師の役割

名前のない困難に寄り添う 地域の健康を支える保健師の役割

看護職の1つ、保健師とは

「看護職」といえば、病院に勤務する看護師を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、実は「保健師」も看護職の1つです。保健師は、病気の有無に関わらず、全てのライフステージにある人の「健康」が保持できるように援助を行います。子育て期では健やかな育児ができるように、相談援助を行います。働きざかりの世代には、労働生活と生活習慣のバランスをとりながら生活習慣病の予防行動がとれるようサポートします。高齢期では、自分らしい生活が継続できるよう支援します。個別支援をしながら、地域のネットワークやケア資源などのさまざまな情報を駆使し、コミュニティケアにつなげていく役割を担っています。

ケアが必要なのは急性期だけじゃない

保健師は、その人が生活する上で困っていることは何か、どうすれば望んでいる暮らしを実現できるのかということに着目したケアを行います。例えば、脳梗塞になったものの重症化に至らず、要介護認定を受けずに日常生活を送る人たちもいます。周りから見れば、今まで通りの生活を送っているように思えるかもしれません。しかし、そうした人たちにヒアリング調査を行ったところ、以前の身体状況との違いからさまざまな思いやニーズがあることが判明しました。「以前より疲れやすい」「体がだるい」「時々頭痛がある」などの身体的なことに加え、そうした困りごとを「コミュニティの人々に理解してもらいにくい」といった悩みを抱えていたのです。

名前のない困難を抱える人たちも豊かな生活を

「育児不安」「要介護」「生活習慣病」といった状態や病気については、すでにそうした人をサポートする制度はたくさんあります。しかし、現状の保健医療福祉の制度では救いきれていない人もいるのが現実です。その制度の枠組みに入らない人たちにも、生活する上でさまざまな困難が生じている場合があります。そのような「名前のない困難」の中にいる人たちに寄り添い、地域の中で豊かな生活を送れるようサポートする「予防活動」が、保健師の大きな役割なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

長野県看護大学 看護学部 看護学科 広域看護学講座 教授 安田 貴恵子 先生

長野県看護大学 看護学部 看護学科 広域看護学講座 教授 安田 貴恵子 先生

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看護学、地域看護学、公衆衛生看護学

メッセージ

想像する力を育てること、積極的に人と関わることを大事にしてほしいです。地域住民が属性を超えて助け合う「地域共生社会」という考え方があり、これからは地域で支え合う社会づくりが求められています。まずは、あなたが住んでいるコミュニティに関心を持ち、想像してみましょう。自分の足元を見てみると、いろいろな大人がいろいろなところで支え合っていることがわかります。家庭生活や学校生活の中のつながりも大切ですが、それ以外の場でも、ぜひ自分が動いて人と関わる経験をしてみてください。

長野県看護大学に関心を持ったあなたは

長野県看護大学は、長野県をはじめ日本各地の医療・保健機関や自治体において、多様な文化を理解し地域社会の人々の健康と幸せを守ることに貢献できる看護実践者の育成を目指しています。
本学では、看護の対象を「地域で生活を営む人々」として捉え、看護師と保健師、選択で助産師という3つの国家試験受験資格を取得できます。実習では学生5~6人に1人の教員が担当するなど、充実した教育体制による質の高い看護職員の育成に取り組んでいます。さらに卒業後のキャリア形成に役立つ様々な取り組みも、全学年にわたって行っています。