人々が「生き抜く力」を支える保健師

人々が「生き抜く力」を支える保健師

生活に密着した看護職「保健師」

看護職の一つに、保健師という職業があります。多くは公的機関で働き、住民の健康を生活に近いところで支える仕事です。なかでも保健師が最も注力しているのは、病気の予防です。健康な人が病気になったり、すでに病気や障がいのある人の健康が悪化しないよう、保健センターで健康状態の聴き取りをしたり、家庭訪問をしたりします。

時には被災地に駆けつける

保健師の仕事の一つに、災害時の避難所の運営があります。地震や水害など、住民の避難が必要な大きな災害が起きたとき、人は心身のバランスを崩しがちなので、保健師が避難所に集まった人々の健康をチェックするのです。普段飲んでいる薬が足りているか聴いて回ったり、感染症が蔓延(まんえん)しないように気を配ったりするのはもちろん、健康な人がもともと持っている「生きる力」を損なわないようにするのも大事なことです。
例えば、避難所生活が長引いて暇を持て余している若者がいれば、掃除や炊き出しを手伝ってもらいます。そうすることで、彼らは自分にもできる仕事があり、役立つことができるのだと気づきます。また、赤ちゃんを連れた家族や高齢者は、周りの人に気を使って早々に避難所を去ってしまうことも少なくありません。そのような人々の元を訪問して、必要な支援をするのも保健師の仕事です。

「受援力」を引き出す

見えにくいけれど大事な保健師の仕事とは、誰もが持っている自然治癒力や人を頼る力を呼び覚ますことです。カゼをひいても十分な睡眠や安静に過ごすことで自然に治ります。また健康は一人では守れないものでもあり、困ったらSOSを出していいのです。これを「自然治癒力」であり「受援力」といいます。特に災害時は誰もが大変な思いをしているので、自分だけがわがままを言ってはいけないという気持ちが働き、受援力が弱まります。支援が必要でも声を上げられずに困っている人々を置いてきぼりにしないために、保健師はその声を一つひとつ逃さないよう聴く力と看護の視点での観察力を大事にしています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

武蔵野大学 看護学部 看護学科 教授 中板 育美 先生

武蔵野大学 看護学部 看護学科 教授 中板 育美 先生

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看護学、母子保健学、災害看護学

先生が目指すSDGs

メッセージ

保健師の仕事は、人々が安心して健康に暮らしていけるよう、生活に寄り添って支えていく、とても尊い、やりがいのある仕事です。人と向き合う仕事なので、人に対する興味がある人や、人と関わることが好きな人に向いているでしょう。昔は女性のイメージが強い職業でしたが、男性保健師も生き生きと住民と協働して、健康なまちづくりに奮闘しています。
また私のように、現場で経験を積んだ後、研究や研修センター、あるいは国の政策立案に関わるという選択肢もあります。幅広いキャリア選択があるのもよい点です。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

武蔵野大学に関心を持ったあなたは

2024年に100周年を迎えた武蔵野大学は、同年4月、ウェルビーイング学部ウェルビーイング学科を新設しました。2023年4月には、社会と環境をデザインし実現する、文理融合型の「サステナビリティ学科」を開設し、近年では、起業家精神を育成する「アントレプレナーシップ学科」や私立大学初の「データサイエンス学科」を新設。常に時代の変化を先取りし、13学部21学科の文・理・医療・情報系の総合大学へと発展・拡大を続けています。