平時も災害時も住民と行政を結び、健康な生活を守る保健師

平時も災害時も住民と行政を結び、健康な生活を守る保健師

保健師のモチベーションは「人が好き」

保健師は命や健康を一番に考える専門職です。地域看護の観点から住民の病気予防や健康維持に力を尽くします。妊婦さんから高齢者、障がいのある人など、さまざまな人に親身に寄り添い、多様な主張を受け止めながら地域の最適解を求めていきます。異なる考えを持つ相手とも調整できる社交性を発揮して、各機関や団体と信頼を築き、連携をとる力が必要で、ダイナミックな仕事であるといえます。

震災時に役立ったのは平常時のつながり

東日本大震災時に、岩手県は甚大な被害を受けました。災害直後の保健師の役割は、住民の命や健康を守ることです。避難所では民生委員や保健推進委員と連携しながら体調管理を行い、また、地元の医療・福祉関係者と県外から駆けつける支援者とで、ケアが必要な人を支える体制を構築しました。非常時でも強固な連携を保つには、普段から住民・地元の医療・福祉関係者とつながり、信頼に基づいて周囲を動かせる力が必要です。また、住民がもともと健康であること、それぞれが助け合えるコミュニティであることも重要であり、それらは平常時から保健師が担う仕事です。東日本大震災の場合、復興期以降の再建が遅れており、急性期を抜けたあとも、地域住民と協働しながら、支援を模索する活動は続いています。

心の支援には「未熟」が強みになることも

被災地での活動や支援では若さゆえにと経験や力量がなく、尻込みすることもあります。でもその「未熟さがいい」という被災者の声も、災害時看護研究の中で多く集まりました。支援を受ける側の人たちが、過度に恐縮したりせずに気楽に受け入れやすいのです。また、若いスタッフや大学生の世話をやき、その成長を見守ることで、高齢者の活力が湧くという副次的なメリットもありました。
今後も災害は起こるでしょう。保健師は住民の生活を包括的かつ継続的に守る役割を担い、平常時も緊急時も地域住民と行政のかけ橋となり力を発揮する存在なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

岩手県立大学 看護学部  助教 尾無 徹 先生

岩手県立大学 看護学部 助教 尾無 徹 先生

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看護学、地域看護学

先生が目指すSDGs

メッセージ

世の中には多くの仕事があります。まずは幅広く調べ、いろいろな人に話を聞いてみましょう。今はインターネットで自分とよく似た興味・関心を持つ人とつながるのは容易です。ただ、日常で自分とは接点が少ない人、まったく畑違いの人との交流から新たな発見をすることも多く、学びが大きいことも少なくありません。
もし可能であれば、地域の行事やボランティア活動などに参加してみてください。つながりを大事にしていればプラスになることがたくさんあり、地域の人とのつながりは災害時にも大きな力になります。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

岩手県立大学に関心を持ったあなたは

大学は「知識」を得る場であるだけではなく、「人生の目的」を考える場であり、これからの人生で自分は何をなすべきかを探求する場でもあります。人はそれぞれ固有の素質と能力を持っています。それをいかに見出し、育成していくかが教育の最大課題であると考えています。この大学での貴重な学習期間に、自己の能力と個性を伸ばし、適性を見出すことに努めてください。本学の教職員は、全力を挙げてこれに協力します。