日本の製造業を支える中小企業
産地における中小企業のネットワーク
製造業に携わる日本の中小企業は、業種ごとに数十~数百社が特定の地域に集まっていることが多く、大阪府堺市の刃物、愛媛県今治市のタオル、岡山県倉敷市のジーンズ、福井県鯖江市の眼鏡などがその好例です。それぞれの産地が形成された背景にはいろいろな事情があります。
例えば、大阪府東大阪市の場合、金属や樹脂の部品をつくる中小企業が多く、金型メーカーが多数集まっていました。家電や自動車の部品を大量生産するためには、1つの型(金型と言います)が必要なためです。金型は完全受注生産であるため会社経営は不安定になりがちです。不況で経営が厳しくなると、倒産・廃業が起きたり、熟練工が削減されましたが、彼らが独立創業した結果、金型メーカーが増えていきました。そしてお互いに連携してネットワークをつくり、分業したり、仕事を回し合ったりして、柔軟な受注体制を築き上げていきました。
自動車産業を支える中小企業
1990年代半ば以降、家電製品の生産拠点はアジアに移転しました。しかしながら、自動車については今もなお日本国内で多数生産されています。自動車1台につき部品は2万~3万個あり、非常に複雑な製品です。車の生産では、部品メーカーが協力して自動車メーカーに納入することが不可欠で、日本の自動車製造業界が培ってきた複雑な取引システムは簡単に真似できるものではありません。高品質な部品を無駄なく生産・納入するまでには、自動車メーカーと部品メーカーが一体となって改善する必要があり、小さな積み重ねが利益につながります。自動車産業は日本が強みを持つ分野ですが、それを支えているのは中小企業なのです。
海外に事業展開する中小企業
中国、東南アジア、インドなどでは、現地で自動車をつくり販売する「地産地消」が進んでいます。中小企業の場合、特にタイへの進出が多く、現地に貢献すると共に、日本へも利益が還元されています。
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先生情報 / 大学情報
岐阜大学 社会システム経営学環 教授 加藤 厚海 先生
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