自然保護を越えた、野生動物の活用をめざして
野生動物は資源になる!
「野生動物資源学」という学問分野では、野生動物の生物学的な研究を進めるだけでなく、動物を「資源」とみなして人間社会との関わりを考えていきます。ただの石ころでも、矢の材料に使えるという価値を見いだした瞬間に、価値のある資源に変わります。富山で採れる「げんげ」という深海魚も、以前は網にかかっても捨てられていましたが、近年は料亭や居酒屋で使われるようになり、価値が上がってきました。同じように、少し前までは一部の狩猟関係者のみが食べていた鹿肉なども、野生鳥獣の食肉を意味する「ジビエ」という言葉とともに社会に浸透して、おしゃれな食材として人気が高まっています。このように、野生動物を資源としてとらえる意識を養うことで、その価値は大きく変わっていくのです。
自然観のアップデートの必要性
資源となる野生動物をどのように維持をしていくのかは重要な課題です。しかし、現在の法律は実情に追いついていません。明治以降に狩猟が一般に開放されるようになり、また毛皮や肉類の野生動物資源の需要が高まり、乱獲が起きて、鹿をはじめとする野生動物の数が減少しました。現在の鳥獣保護管理法の骨格は、そのような野生動物が激減していた時代に作られたものです。その後、法律の一部は改正されたものの、保護によって逆に一部の野生動物が増えすぎてしまった日本の現状には対応しきれていません。日本の里山の風景イメージは昭和時代で止まってしまっているため、野生動物という資源を有効に活用するためには、人々の自然観を現状にあわせてアップデートしていく必要があります。
持続可能な自然の利用方法を学ぶ
野生動物をはじめとする自然を持続可能なやり方で活用する方法を考えるうえで、昔の人々の知恵は大きなヒントになります。江戸時代や大正期の人々は、自然を活用しながら生きていました。古い文献を通じて、そのやり方を学び、使えるアイディアを現代社会に適合するようにアレンジする「温故知新」という姿勢も、これからの野生動物資源学では重要なのです。
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先生情報 / 大学情報
岐阜大学 社会システム経営学環 准教授 森部 絢嗣 先生
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先生への質問
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