中小企業がもつ「見えない力」を正しく評価する
目に見えない資産
企業を評価する上では、さまざまな基準が存在します。従来は最新鋭の設備をはじめとする「有形資産」を備えている企業ほど、売上・利益ともに上がりやすいという傾向がありました。しかし現在では、技術力や営業力、ブランド力といった目に見えない資産=「知的資産」が、企業に利益をもたらす時代になっています。例えば、アメリカでは企業が創出する価値のうち90%が目に見えない資産によってもたらされているという研究報告もあります。目に見えない資産=知的資産を、何らかの方法で見えるようにできれば、企業の成長をより加速させる方法が見つかるはずです。
99.7%の中小企業
日本の企業は99.7%が中小企業(中堅企業)に分類されており、この中小企業の力が、大企業を支えている面も少なくありません。しかし、例えば大企業がある資材を購入するとき、インターネットで調べて最も安く販売している企業から購入する、というケースは多くあります。この場合、その企業がどんな技術やサービス力(=知的資産)をもっているかは問題にされません。大企業が中小企業に対してコスト面だけを求めるような状況が続けば、地域の産業、さらには日本の経済全体の成長が妨げられてしまいます。
目に見えないものの評価基準
また、中小企業が必要とする事業資金は、銀行や信用金庫といった金融機関が融資を行い、バックアップしています。従来の融資の基準は財務諸表、つまりその企業の売上や利益、借金といった目に見える要素を評価して、いかにその企業が倒産しにくいかを基準とすることが一般的でした。しかし、近年では金融庁や経済産業省の方針もあり、企業がもつ知的資産を評価して、その企業が「発展する可能性」を評価する流れに変わりつつあります。ただし、まだ知的資産を客観的に評価する基準はつくられていません。今後しっかりとした基準ができれば、中小企業が大企業や金融機関から正しく評価されるようになり、日本経済全体が活性化することも期待できるでしょう。
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大阪産業大学 経営学部 経営学科 教授 田中 宏昌 先生
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