思わずゲームで課金したくなる、消費者心理をついたマーケティング

思わずゲームで課金したくなる、消費者心理をついたマーケティング

ゲームにハマってしまうのはなぜ?

スマートフォンを使ったソーシャルゲームに夢中になったことはありませんか? ゲームの売り手は消費者の心理をついてサービスを展開しています。1つ目はこれまで集めたアイテムなどがもったいないので途中でやめられない、という心理、2つ目は自分好みに育てたキャラクターへの愛着、3つ目はほかのプレイヤーとの競争や協力というつながり意識です。その結果、ゲームをなかなかやめられず、ときには課金してガチャを引きたくなるのです。

消費者は行動を正当化したい

消費者はお金を出したものに対して価値を信じたいという心理を持っています。薬の効き目を信じることで治癒力が高まるプラシーボ効果もそのひとつです。例えば風邪をひいたとき、1本1,000円の栄養ドリンクを飲んだとします。体調がよくなったら、「この栄養ドリンクはよく効く」と思うでしょう。本当は、たまたま回復のタイミングと栄養ドリンクを飲んだタイミングが一致しただけかもしれません。しかし消費者は「高いお金を払ったから効くはずだ」と信じ込み、また高い商品を買うでしょう。このように値段が高いからこそ売れる商品があるので、売り手は価格設定のときに消費者心理を考慮する必要があるのです。

消費者に働きかけるマーケティング

技術の発達もマーケティングに影響を与えます。インターネットが普及したことで、売り手は消費者一人ひとりに働きかけるマーケティングができるようになりました。購買履歴やウェブサイトの閲覧履歴を分析し、おすすめ商品を提示するというのもその手法のひとつです。
また、異分野を応用したマーケティングの研究も行われています。例えば神経科学を利用し、広告を見たときの視線や脳波の動きを測定する研究や、商品ラベルの有無で脳の活性化に違いがあるのかをMRI(磁気共鳴画像装置)で調べる研究があります。ビジネスの世界では、その成功のために、あらゆる分野の知見が取り込まれているのです。

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東京大学 経済学部  教授 阿部 誠 先生

東京大学 経済学部 教授 阿部 誠 先生

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経済学、統計学

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メッセージ

マーケティングはセールスだけを指す言葉ではなく、「売れるものを作る」という考えが基盤にあります。売り手と買い手、双方にメリットがある価値交換の仕組みを作るためには、相手の立場になって考えることが大切です。つまりマーケティングとは「愛」なのです。
また消費者の立場でも、売り手がどういう心理を利用して物を売っているのかを理解すると、広告に踊らされない自制心などが身につくでしょう。あなたも1人の消費者ですから、マーケティングの知識が生かせる場面は多いと思います。

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東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。