「ええ人が欲しい!」 中小企業に必要な「採用力向上」をめざす
人手が足りない問題
労働人口の減少による人手不足は日本全体の課題です。そこで企業にとって重要なのが「人材の採用」です。ただし都市部の大企業と比べると、地方の中小企業の場合は企業そのものの知名度が低い上に、経営者自身や総務部門が人事の仕事を兼任していることも多く、採用にかけられる経営資源が限られがちです。
「ええ人」ってどういう人?
関西の、とあるエリアの中小企業の採用に関する研究があります。「経営資源が限られる中小企業では、求める人材像が不明確または思い込みのまま採用活動を実施するため、人材の獲得や定着が難しいケースがある」という仮説のもとで、中小企業数社の人事担当者向けの講座を通じてヒアリングや対話が重ねられました。すると、企業が求める人材像は「ええ人」や「新卒の元気な男性」など、確かに漠然としていたのです。そこで講座では、そのエリアの人口減少の現状を再認識してもらった上で、「なぜ人材が必要なのか」「どの仕事に必要なのか」「どういう人材が『ええ人』か」「その仕事は本当に新卒の元気な男性でないとだめなのか」などを丁寧に掘り下げていきました。すると、求める人物像が具体的になったり、これまで男性の正社員が行っていた仕事を女性や非正規社員、外国人材といった人たちで行うにはどのように職場環境を整えればいいかといったアイデアを出したりと、それまでになかった視点から自社の姿や働き方を考えるようになったのです。そこからさらに、実際の採用や社員の定着に結びつくことが期待されます。
産官学の連携で地域課題の解決を
日本の企業数の99.7%を占める中小企業、なかでも地方の中小企業はそのエリアに根ざした産業も多く、地域経済を支える大切な存在です。そこでの人手不足を打開するには、現状をきちんと理解した上での「採用力向上」が不可欠です。人口減少という地域課題を自分ごととしてとらえ、理想の環境像や求める人材像の解像度を上げるためには、自治体や大学などと連携してノウハウを得ることも有効なのです。
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武庫川女子大学 経営学部 経営学科 准教授 山下 紗矢佳 先生
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