なぜ類似した産業が地域に集まるのか?
類似した産業は特定の地域に集まりやすい
地域と地域に根ざした産業、地域で暮らす人々の関わりを研究する学問が、経済地理学です。日本のアニメーションを支えるアニメスタジオの多くが東京都の大泉学園やJR中央線沿線に集まっているように、類似した産業が特定の地域に集まる傾向がみられます。これを「産業集積地域」と呼ぶのですが、それが都市部にあるのか、地方にあるのかで果たす役割が違っています。都市部は、先端産業を支える産業が集まっていて、地方は、日本のものづくり全体を支えるという役割を果たしています。
試作開発に活路を見出した諏訪市の産業集積地域
日本のものづくり産業の競争力は1990年ごろをピークに右肩下がりです。変革が求められる中、ある産業集積地域が最後のよりどころとしたのが、試作品の開発です。長野県諏訪(すわ)市は、精密機械工業が発達し、時計やカメラ、細かい部品を作る、技術力の高い企業が多い地域です。試作開発する中小企業は、最初から技術力に優れていた企業ばかりではないということが現地調査で判明しました。金属を削ったり、研磨するベーシックな技術をより高めたり、応用して開発することを通じて、試作開発の仕事を獲得していったのです。従来の下請けでは、同じ部品を1個何十銭単位で作るのですが、試作開発部品は、1個当たりの単価が高くなります。単品だと値段はさらに跳ね上がり、立場も強くなります。
中小企業が集まるまちの強み
同業者が集まっていると、人々の公私でのかかわりが深く、わからない点があるといつでも気軽に聞けるというメリットがあります。また新しい技術を習得するために、地域の公的機関が研究会を開いたり、さまざまな企業が集まって工場見学や講習会を行ったりするなど、産業集積地域の強みが生かされています。ネット時代に入り、産業集積地域がなくなるのでは、という議論もありますが、こうした強みが企業の技術力や競争力を支えている限り、今後もなくなることはないでしょう。
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先生情報 / 大学情報
和歌山大学 経済学部 経済学科 准教授 藤田 和史 先生
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