作業療法による健康増進ーまちづくりと個別支援ー
健康に暮らせる期間は意外と短い
日本の平均寿命は男女ともに80歳を超えており、世界でもトップレベルの長寿国です。一方で健康上の問題で制限されることなく生活できる期間を指す「健康寿命」は、平均寿命よりも男性は約9年、女性は約12年短いと言われています。少子高齢化や地域格差などの問題もあり、自分はいつまでも健康かつ幸せに暮らしていけるのか、不安に感じている人も少なくないでしょう。
ヘルスプロモーション(健康増進)の戦略
こうした状況を踏まえて、国は地域住民が支え合う体制づくりを進めています。その第一歩が、「通いの場(高齢者サロン)」の整備です。通いの場とは、地域住民が気軽に集まって、体調をチェックし合ったり、栄養や体操の教室を受けたり、健康に暮らすための活動を行う場所です。
ただし、支え合いのシステムづくりは一律には考えられません。例えば、より効果的なシステムにすべく高齢者に関する調査が積極的に行われていますが、場所によって人口も文化も異なります。「日本の高齢者」というくくりで示されたデータが必ずしも全市町村の参考にはなりません。ヘルスプロモーション(健康増進活動)の正解は1つではないのです。
暮らすだけで健康でいられる町へ
各地域に適したヘルスプロモーションには、作業療法に根付いた「集団と個人、双方へのアプローチ」という考え方が応用できます。集団=町には、支え合いのシステム構築をサポートする間接的支援をして、個人=健康リスクの高い人には運動や食事の指導といった直接的支援をします。双方で、住み慣れた町で暮らしているだけで健康を保っていられる状況をつくり、その結果、健康寿命が延びて65歳以上となっても新しい役割や活動を担える社会となることをめざします。また、通いの場を医療、介護、就労などほかのサービスも網羅するプラットフォームへと発展させることで、いずれは外国人や障がい者の就労問題、出所者の社会復帰など、幅広い社会問題の解決の糸口にもなることも期待されています。
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先生情報 / 大学情報
岐阜保健大学 リハビリテーション学部 作業療法学科 講師 藤井 稚也 先生
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