どんな立場にいる人も、幸福を実感できる健康社会へ
健康ってなんだろう?
「ヘルスプロモーション(健康社会学)」とはWHO(世界保健機関)が掲げる21世紀の健康戦略で、グローバルに展開されています。ヘルスプロモーションの視点で提唱する「健康」とは、「豊かな毎日を送るための資源」です。病気を治したり予防したりするだけでなく、「幸福(ウェル・ビーイング)」を感じられる要素も健康には欠かせないと考えられています。長い間友人に会えなくて気持ちがふさいでやる気が出なかったり、逆に友人とのコミュニケーションで勉強に意欲が持てたりすることがあるでしょう。薬や医療のみではなく、人が健康をつくることもできるのです。
「個人への健康教育」と「健康的な環境づくり」
ヘルスプロモーション、つまり健康づくりには、決まった正解があるわけではありませんが、重要な視点が2つあります。1つは個人への健康教育です。自分で健康づくりをコントロールして改善するための支援で、「ヘルスリテラシー」を高めていきます。食育をはじめ、感染症予防に手洗いの習慣をつけるなど、予防医学の知識も含まれます。もう1つの大切な視点は、そこにいるだけで誰もが健康になれる空間やサービスなど、健康への知識や技術を持たない人も恩恵が得られる環境をつくっていくことです。
社会全体に及ぶ取り組み
ヘルスプロモーションの領域から環境にアプローチするとは、具体的には行政の健康計画や地域のまちづくり、企業の製品やサービス、健康経営などへの視点、また、通うのが楽しい学校づくり、病院を取り巻く環境づくりなど、社会全体に及びます。例えば、かつては大人のお使いで子どもがたばこを買えましたが、現在は買えない仕組みができ、学校の近くでも吸えなくなりました。これは、たばこの健康被害を防ぐための環境づくりといえます。環境づくりの働きかけは、社会の流れを変えることだけではありません。子どもや高齢者は栄養学を知らなくても、家族が気をつけて料理することで健康的な食生活が送れることなどは、最も身近な環境づくりでしょう。
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先生情報 / 大学情報
順天堂大学 国際教養学部 国際教養学科 准教授 鈴木 美奈子 先生
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健康社会学、ヘルスプロモーション先生が目指すSDGs
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