くらしを味わうリハビリ援助 ケアの核には作業がある

作業療法のアイデンティティ
作業療法というと、リハビリ施設で実施されるイメージかもしれません。しかし実際はもっと幅広く、人が生きること全般に関わるものです。そもそも作業とは「その人にとって価値や目的があること」を指すことからも、作業療法は、その人が生きているその場所で、気持ちを最大限に尊重して行われる治療法と言えます。例えば、何かの不自由を補うためにテクノロジーを活用して、生活環境を改善していくことも作業療法の一部です。そして、作業療法の対象となる人の目からみれば、作業療法士は生活環境の一部ですから、回復をめざすパートナーだと言えるでしょう。自分自身を治療資源として活用しながらその人の能力を引き出し、生活環境を最適化することで、作業しやすい状態を創り出す、それが作業療法の核となる考え方です。
作業療法士からの発信
現代では障害の有無に関わらず、誰もが多少の「生きづらさ」を抱えています。それを解消するのが作業療法士の役割ですが、社会の認識がそこに至っているとは言い難いのが現状です。そこで、「そもそも作業療法(士)とは?」という情報発信が行われています。その結果として、リハビリ施設などに限定されない活躍の場と、「人々の健康や幸せなくらしとはなにか」を捉えなおし、多様性に開かれたくらしのかたちを社会にもたらすことができると考えられます。
「個」で生きるのではなく支え合う
さまざまな調査の結果、プロである作業療法士とその技術や知識を受け取る側の間には「壁」が存在することがわかりました。つまり、プロは技術などを提供して「あげる」、受け取る側はプロの言うことだから「従う」といった、上下関係に似たものが生まれているようなのです。この壁が解消されれば、作業療法の効果はさらに向上すると考えられます。その際には、立場を超えて人と人が頼り合い、助け合う環境が必要になります。生活環境を眼差す作業療法士の活動は、大切な人々とのつながりを再構築できる可能性をもつケアの方法として期待されます。
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岐阜保健大学リハビリテーション学部 作業療法学科 講師森本 真太郎 先生
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