障害のある人の教育を阻むバリアとは? 途上国を例に考える
障害者の教育を阻むバリア
障害の有無による格差は、世界各国に存在します。特に途上国を見ると、障害のある人はそうでない人に比べ、教育の機会や学校に通った年数が少なくなっています。家庭の貧困、インフラの不備、教育プログラムの準備不足など、社会に存在するさまざまなバリアが原因で、教育の機会が減少していると考えられています。
貧困と教育の関係
学校に行く機会を作るためには、まず家庭内に存在する貧困を解決することが重要です。貧困層の家庭に複数の子どもがいた場合、親が優先的に教育を受けさせるのは障害のない子どもです。資金が限られていると、障害のある子どもへの投資の優先度が下がってしまいます。
ユニセフなどの国際機関では奨学金や給食などの支援をしていますが、これだけでは障害のある子どもに教育を受けさせ続けることは困難です。そして、たとえ費用の問題が解決しても、通学路や建物のバリアフリー化、教科書の点字化など、教育を受ける環境に合理的な配慮ができていなければ長期的に通うことはできません。
教育の効果を実証する
貧困や環境、教育などのバリアを取り払うためには適切な政策や投資が必要です。優先的に取り組んでもらうためにも、障害者への教育が社会にもたらす効果を証明することが求められています。障害の有無にかかわらず、教育を受ければ高度な仕事に就く機会を得やすくなり、経済的な自立につながることが明らかになっています。しかし障害のある人に対しては「教育の効果はないだろう」と誤った認識をされている場合が多いのが実情です。こうした心のバリアをなくすために、「障害がある人も教育を受ければ雇用につながると実証されている」といったエビデンスに基づいた提言が必要なのです。
このように、さまざまなバリアによって障害のある人がポテンシャルを発揮できない状況は世界中で共通の課題です。グローバルな視点で障害者を取り巻く状況を見れば、日本の課題や必要な対策も見えてくるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
筑波大学 人間学群 障害科学類 准教授 ラミチャネ カマル 先生
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