子どものこころの問題について
専門医の数が圧倒的に不足している
不登校、対人恐怖、虐待、落ち着きがない、いじめを受けている、体重減少……など、子どもたちが医者に訴える症状も多様化しています。精神科に関わる、子どもの症例が増えているのです。
また、例えば不登校の原因として考えられるものだけでも「適応障がい」「発達障がい」「うつ病」や「統合失調症」など多岐にわたり、それぞれ対応の仕方も細かく変わってきます。しかし現在、児童精神科専門医は国内に200名ほどしかいないため、正しい診断や治療がとても遅れているのです。こうした子どものこころの障がいに向き合う専門医を増やすことが大きな課題となっています。
自閉症の発症には多くの要因が関与している
診断技術が向上し自閉症と診断される子どもは年々増えており、自閉症のような特性がみられる自閉症スペクトラムも含めると学童の1~2%という調査結果も報告されています。自閉症は、例えば糖尿病や脂質異常症などと同様で、多くの要因が関係している疾病です。
複数の遺伝子の微妙な変化が発症に影響していること、また出生時の低体重や大気汚染など環境要因と関係があることがわかっています。脳の画像データから、脳内伝達物質のひとつであるセロトニンの機能障がいが、症状に影響していることも推察されています。
早期発見と継続した支援が求められている
大人になってから自閉症と診断されるケースもあります。健常な人であれば周囲の雰囲気を判断しながらできる行動が、自閉症の人はとても苦手です。また、大人になるほど治療が難しくなります。新薬の開発も進んでおり、少しでも早い治療と療育(障がいのある子どもが社会的に自立することを目的に行われる医療と保育)が重要視されています。
早期発見の場として期待される5歳児健診の実施や、その後の継続したサポートが欠かせません。予防から支援まで、学校や地域と連携した支援体制の構築が急がれているのです。
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先生情報 / 大学情報
弘前大学 医学部 医学科 教授 中村 和彦 先生
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