サイエンスで自然災害の危険を予測する

サイエンスで自然災害の危険を予測する

地震や大雨が多い日本の地盤を安全にするには

日本では大きな都市がある場所は、たいてい海岸沿いや大きな河川に沿って広がる平地です。そうした平地の多くは、砂や粘土からなる軟弱地盤です。そのため重量のある建物をつくるときは、地面の下を調べるボーリング調査などの地盤調査を行い、硬い地層まで達する杭(くい)を打ち、その杭の上に建物を建設します。そうしないと、建物が沈み込んだり、傾いたりしてしまうからです。日本は、世界的に地盤を安全に利用する技術が発達している国です。それでも、近年は大きな地震などによる災害が発生しています。こうした自然外力に負けない、より強い地盤の研究開発が進められています。

能登半島地震で崩れなかった道路もあった

能登半島地震によって、能登半島を貫く自動車専用道路「のと里山海道」は、多くの箇所で、大きく損壊しました。しかし、その先にある輪島道路(令和5年に開通した区間)は、ほぼ無傷でした。この区間は、新しい基準に合わせた工事で、強固な地盤にしてありました。土の密度を高めて強さを可能な限り上げることや、地中に水がたまらないように排水することなど、最新の技術成果が生かされたのです。しかし、自然がもたらす外力は人間が想像したものを遥かに超えることがあります。そのため、自然に対して謙虚に「科学」する姿勢をもつことが大事なのです。

繰り返す土砂災害-地盤に残る土石流の痕跡を探る

日本には崩れやすい斜面や土石流が発生しやすい渓流が各地にあり、その場所に合わせた防災対策が重要です。土石流の多いエリアの地層には、炭化した樹木の破片が混じっていることがあります。それらを探し出して、放射性炭素年代を測定することで、「ここで過去何年間に少なくとも何回の大きな土石流があった」といった知見が得られます。また、歴史資料から災害に関する記事を見つけることもできます。このようなアプローチで、過去の災害の特徴や傾向を明らかにして、未来の災害の予測ができれば、具体的な防災対策に役立ちます。

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先生情報 / 大学情報

山口大学 工学部 社会建設工学科 教授 鈴木 素之 先生

山口大学 工学部 社会建設工学科 教授 鈴木 素之 先生

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防災工学、地盤工学

メッセージ

人の命や社会を守る研究では、自然に対する理解が不可欠です。対象物を観察して、理論を立てて説明することの繰り返しです。斜面も、同じ地震動や雨を受けても滑らずにしっかり残った斜面と崩れた斜面があり、その両方に理由があります。あらゆる角度から調べて真実に迫る過程の醍醐味(だいごみ)を、ぜひ一緒に楽しみましょう。

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