建物の揺れをゼロにする究極の「絶震」とはー月面にも応用?
地震の揺れをシミュレーション解析
東北地方太平洋沖地震や能登半島地震など、近年、耐震設計の想定をはるかに超えた地震が発生しています。このような地震に備えて災害に強い街づくりを進めていくためには、都市の建造物が建つ地盤が地震でどのように揺れるのかを予測して、それを建造物の設計に生かしていくことが不可欠です。
地震の揺れは地盤の状態によって異なり、埋め立て地などの地盤の柔らかい場所では被害が大きくなる傾向にあります。そのため、都市のさまざまな地盤の調査データや、実際に地盤や杭基礎や建物の模型を振動台で揺らして得られた実験データをコンピュータでシミュレーション解析して、揺れが予測されています。
究極の地震対策「絶震」とは
建築物の地震対策は耐震・免震・制震の3つに大きく分けられますが、いずれも大地震に対する効果には限度があります。そこで提案されている究極の地震対策が「絶震」です。つまり、地震の揺れが伝わらないように建物と地面を切り離すのです。具体的には、リニアモーターカーのように電磁石を使う方法が考えられています。建物と地面の間に電磁石を置き、緊急地震速報を受信すると電流が流れ、発生した反発力で建物を浮かす仕組みです。建物と地面が完全に切り離されるため、地震波が伝わることはありません。現段階ではまだ技術的に克服する課題がありますが、建築土木工学だけでなく電磁気学や制御工学などの周辺技術も含めて、実現に向けた研究が進められています。
月面への応用をめざす
この絶震技術は、将来、月面に建設される探査基地などの建造物の「月震」対策としても活躍するかもしれません。月にも隕石(いんせき)衝突などにより地震(月震)が起こりますが、月の重力は地球の6分の1であるため、建物を浮かせる絶震は取り入れやすいといえます。月での絶震構造を考えるには、まず月の地盤を知らなければなりません。そこで、アポロ11号が持ち帰った月の砂(レゴリス)を模倣した砂を使い、その性質を調べるところから研究がはじめられています。
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