土砂災害の被害を減らす予測システムの構築

土砂災害の被害を減らす予測システムの構築

土砂災害が多い日本

日本は国土の約7割が山地であり、山の斜面や谷間にも住宅地が広がっているため、世界と比較しても土砂災害の多い国です。土砂災害には、がけ崩れとも呼ばれる急傾斜地崩壊、ゆっくりと斜面が移動する地すべり、土砂や石が一気に押し流される土石流などがあります。これらの土砂災害はハードとソフトの両面からの対策が取られています。ハード面の整備は、危険な斜面を安定させる擁壁(ようへき)、土砂の流出を防ぐための堤などを設置します。しかし、国内には土砂災害の危険箇所が50万箇所以上あり、ただちにすべてを整備することはできません。そこで、ハザードマップの制作や土砂災害警戒情報の発令などのソフト面での対策が重要となります。

急に起こるがけ崩れ

地すべりは地下水などの影響で、深い部分の地層と岩盤との境が動くことが原因のため、ゆっくりと進むのが特徴であり、道路が持ち上がる、側溝がつぶれるなどの予兆が見られます。一方がけ崩れは、表面の薄い部分が崩れる現象のため、動いた瞬間に滑り落ちてしまいます。このがけ崩れを予測することが防災では非常に大切です。
平常時の斜面は、下に落ちようとする土の自重に対して、土の強さが勝っているために崩れません。しかし、雨が浸透すると、土の自重が重くなり、さらに土の強さも減少することから、そのバランスが崩れた時点で下に滑り落ちてしまうのです。

予測システムを構築する

がけ崩れを予測するため、山の斜面にセンサーを設置し、現在の斜面の状態を把握するシステムの開発が進められています。従来は雨を測る雨量計と、斜面の動きを感知する変位計が主に設置されていましたが、現在ではそれらに加えて、降った雨がどれくらい土中に浸透したかを測る水分計を設置しています。
土の状態は地域ごとに違うため、場所ごとの特性をあらかじめ調査しておくことが必要です。将来的には、計測したデータを分析して特性をつかんだうえで、気象状態と合わせて被害を予測するシステムの構築が進められるでしょう。

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鹿児島大学 工学部 先進工学科 海洋土木工学プログラム 教授 酒匂 一成 先生

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メッセージ

教科書や本、さらにはインターネットに書いてあることが、すべて正しいとは限りません。基礎的な公式を単に覚えるのではなく、その式がどういうふうに成り立ったもので、どんな時に使うものかを考えることが大切です。
例えば土木では、地盤を調査してもその現場全体の地盤の状態を把握することは非常に難しいです。その時々に合わせ、知識をうまく使って最善の方法を考え、人とチームワークを取りながら解決します。大学での土木の学びは、そのような能力も鍛えることができます。

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