産業副産物を使ったコンクリートで二酸化炭素を削減

産業副産物を使ったコンクリートで二酸化炭素を削減

セメントと二酸化炭素

コンクリートは社会インフラ整備に不可欠であり、世界で水に次いで消費量の多い材料です。コンクリートの中で、砂や砂利などをつなぐ接着剤の役割を果たしているセメントは、石灰石を1,450℃という高熱で熱して作られますが、このときに大量の二酸化炭素が発生します。セメント1tを作る際に出る二酸化炭素は約700㎏にもおよび、全体量は世界の二酸化炭素排出量のおよそ8%にのぼります。セメントは、建設材料として優れた性能を有し、製造過程で廃棄物を燃料や原料として受け入れるなど社会に大きく貢献していますが、カーボンニュートラルに向けて、代替材料の開発が求められています。

産業副産物を利用

現在、従来のセメントの代わりとなる、産業副産物を利用した固化技術の開発が世界中で進められています。化学反応に必要な成分であるシリカやアルミナなどの供給源として、「ポゾラン」と呼ばれる粉体が使われます。火力発電の副産物であるフライアッシュがその代表例ですが、より環境に配慮した材料として、最近では成分が類似した火山灰などを用いた研究もおこなわれています。また、強度を高めることを目的に、鉄鉱石を溶かして鉄を取り出す際に発生する「スラグ」と呼ばれる副産物を使うことがあります。ポゾランやスラグにアルカリ溶液を加えて作るコンクリートは、ジオポリマーと呼ばれています。

特徴と課題

ジオポリマーは、従来のコンクリートとくらべて、原料由来の二酸化炭素排出量を約6割削減できるという試算があります。また、酸に溶けにくく熱に強いという特徴から、酸性環境である温泉施設や下水施設、火災を受ける可能性がある自動車トンネルの覆工などへの適用性が高いと考えられます。
一方でジオポリマーは、材料設計や製造に関するパラメータが多く、同じ条件で製造しても性状が安定しないことがあります。品質のばらつきを抑制できるレシピや製造方法の開発が課題です。あわせて、長期的な耐久性に関するデータの蓄積や利用実績の拡大も普及への鍵となっています。

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熊本大学 工学部 土木建築学科 教授 尾上 幸造 先生

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