カニの殻で農作物の免疫が活性化し、収穫量もアップ!

カニの殻で農作物の免疫が活性化し、収穫量もアップ!

植物が病気になりにくい効果

植物の病原菌となるカビの細胞表層を構成する物質でもある「キチン」は、植物においても、細胞壁を強くするなどして、生体防御反応を強める効果があります。つまり、植物の免疫力をアップさせるのです。
キチンは、カニの殻の主成分でもあります。福井県はズワイガニの水揚げ量が多く、冬の味覚として有名です。先人の知恵として、福井県内には、廃棄物となっていたカニの殻を畑にまく習慣がありますが、福井の生産農家は経験的に、カニの殻が農作物にいい影響を与えること、植物が病気に強くなるという効果をもたらすことを知っていたと言えます。

キチンをキトサンオリゴ糖に

カニの殻をそのまま地中に埋めるだけでは効果が弱いため、キチンを植物の受容体にはまりやすくする形状に変える必要があります。そこで高分子であるキチンを低分子化してキチンオリゴ糖をつくります。すると、植物の受容体と結合しやすくなります。企業と共同開発したキチンオリゴ糖を主成分とする植物活力剤は、殺虫剤のような有毒な成分を含んだものではなく、植物本来の免疫力を活性化することで、病気にかかりにくくします。農作物の葉に吹きつけることで、病気を抑制するなどの効果が認められています。植物活力剤は、人間にとっての健康補助食品やサプリメントのようなものです。

イネの生長を早め、トマトの味が濃くなる

植物活力剤の効果については、病気に強くなるだけではなく、イネの生長が早くなることもわかっています。根が早く伸びたり、草丈が長くなったりするのです。植物活力剤をイネに使うことで肥料の使用量が少なくて済むという効果も得られています。また、花に使うと、1株にたくさんの花芽がつくことがわかりました。さらにトマトでは収穫量が増し、味が濃くなりました。葉に散布すると特に効果が高く、従来の1.5倍以上の実がなりました。このように、キチンオリゴ糖の効果が多面的に研究されています。

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先生情報 / 大学情報

福井県立大学 生物資源学部 創造農学科 教授 木元 久 先生

福井県立大学 生物資源学部 創造農学科 教授 木元 久 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

微生物学、植物病理学

メッセージ

「福井県立大学にカニの研究をしている先生がいる」とニュースなどで知って受験してくる学生もいますが、テーマはカニの殻です。「カニを食べられる」と期待してくる学生にとっては、がっかりかもしれません。
でも、稲やトマトなどの栽培が私の本来の研究テーマであり、こちらは味の変化を確かめることもあります。あなたも子どもの頃、学校農園で肥料や水やりをし、野菜を育てた経験があるでしょう。自分が開発した農業資材を与えたらどうなるのかを体験してみてください。地域の農業に貢献できる研究は、やりがいがあります。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
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福井県立大学に関心を持ったあなたは

本学は、経済学部(経済・経営)、生物資源学部、海洋生物資源学部、看護福祉学部(看護・社会福祉)の4学部6学科からなる公立の総合大学です。
福井県は、歴史や自然の豊かさ、生産技術、生活文化の質の高さを誇り、非常に優れた「学びと体験のフィールド」です。
充実した施設・設備と恵まれた自然環境の中、少人数教育を柱に、専門能力の養成はもちろん、教養・語学・情報教育を重視した多彩な教育プログラムを展開しています。
また、グローバル時代に対応した留学制度の充実など、教育の国際化にも力を入れています。