天才軍師・諸葛孔明 臨機応変な戦略は苦手だった?
『三国志演義』と史実との違いは?
3世紀頃の中国を描いた小説『三国志演義』は、14世紀頃に書かれて以来、世界中で広く親しまれています。『三国志演義』のなかでも特に人気のある「諸葛孔明」は、あらゆる計略を立てて戦を勝利に導く天才軍師という役どころです。しかし、歴史上の諸葛孔明は戦が得意だったわけではなく、むしろ臨機応変の戦略は苦手だったとされています。天才軍師とされたのは物語を面白くするための脚色で、超人的な力を使って勝利へと導く役割に諸葛孔明が当てはめられたからという説が有力です。その結果、物語上の諸葛孔明の人物像のほうが魅力的に映り、今の世の中に広く浸透したのです。
神となった武将・関羽
『三国志演義』に勇猛な武将として登場する「関羽」も人気のキャラクターですが、歴史的に見ても、関羽は亡くなったあとに神格化されて広く信仰されるようになった人物です。中華圏だけでなく東南アジア諸国でも、中国の人々が住む場所に祭られています。関羽は中国の宗教のひとつ「道教」の神とされていますが、さまざまな文献が研究されるなかで、別の宗教である「儒教」とのつながりが強いという見方も出てきています。
このように、文献を調べていくことで定説とは異なる事実が見えてきます。『三国志演義』に至っては、作られた詳細な年代が不明で、そもそも本当に小説として作られたのかもわかっていません。研究が進むことで、新たな真実が見えてくることでしょう。
文学は地域研究の重要な資料
『三国志演義』をはじめとする文学作品や歴史書、さらに芸能や民間伝説に関する文献まで、三国時代にまつわる文献を研究することで、当時の中国文化や人々の思想、価値観などが明らかになってきます。また、中国の古典研究は「中国学」とも言われ、地域研究でもあります。文学から地域を研究することで、その地域にまつわる新たな発見につながるのです。これは三国時代や中国だけに限らず、ほかの時代や地域でも応用できることです。
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