講義No.14256 外国文学

天才軍師・諸葛孔明 臨機応変な戦略は苦手だった?

天才軍師・諸葛孔明 臨機応変な戦略は苦手だった?

『三国志演義』と史実との違いは?

3世紀頃の中国を描いた小説『三国志演義』は、14世紀頃に書かれて以来、世界中で広く親しまれています。『三国志演義』のなかでも特に人気のある「諸葛孔明」は、あらゆる計略を立てて戦を勝利に導く天才軍師という役どころです。しかし、歴史上の諸葛孔明は戦が得意だったわけではなく、むしろ臨機応変の戦略は苦手だったとされています。天才軍師とされたのは物語を面白くするための脚色で、超人的な力を使って勝利へと導く役割に諸葛孔明が当てはめられたからという説が有力です。その結果、物語上の諸葛孔明の人物像のほうが魅力的に映り、今の世の中に広く浸透したのです。

神となった武将・関羽

『三国志演義』に勇猛な武将として登場する「関羽」も人気のキャラクターですが、歴史的に見ても、関羽は亡くなったあとに神格化されて広く信仰されるようになった人物です。中華圏だけでなく東南アジア諸国でも、中国の人々が住む場所に祭られています。関羽は中国の宗教のひとつ「道教」の神とされていますが、さまざまな文献が研究されるなかで、別の宗教である「儒教」とのつながりが強いという見方も出てきています。
このように、文献を調べていくことで定説とは異なる事実が見えてきます。『三国志演義』に至っては、作られた詳細な年代が不明で、そもそも本当に小説として作られたのかもわかっていません。研究が進むことで、新たな真実が見えてくることでしょう。

文学は地域研究の重要な資料

『三国志演義』をはじめとする文学作品や歴史書、さらに芸能や民間伝説に関する文献まで、三国時代にまつわる文献を研究することで、当時の中国文化や人々の思想、価値観などが明らかになってきます。また、中国の古典研究は「中国学」とも言われ、地域研究でもあります。文学から地域を研究することで、その地域にまつわる新たな発見につながるのです。これは三国時代や中国だけに限らず、ほかの時代や地域でも応用できることです。

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先生情報 / 大学情報

二松学舎大学 文学部 中国文学科 教授 伊藤 晋太郎 先生

二松学舎大学 文学部 中国文学科 教授 伊藤 晋太郎 先生

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中国文学

メッセージ

研究の始まりは、「三国志が好き」という思いからでした。中学、高校と進学するにつれて論語や漢詩を授業で学ぶようになり、大学に入ってからは中国語を学ぶことで漢文も訓読ではなく中国語で読むようになって、漢文が外国語であることを改めて認識することとなりました。大学院在学中には中国に留学して中国の人たちとの交流も広がり、見識も深まるなかで、私にはこの道しかないと思うようになったのです。あなたもぜひ、興味のある分野に飛び込んでみてください。きっと将来の道へとつながっていくはずです。

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二松学舎大学は1877年、漢学者である三島中洲によって創設されました。漢学を通じて東洋の精神文化を学び日本人としてのアイデンティティを確立した、知的、道徳的な社会を支えるに足る人材の育成を目指しています。
日本の伝統的なよさを認識しつつ、グローバルな視点で理解し、世界に向けて発信できる人材の育成に力を注いでいます。
キャンパスは都心の真ん中にある九段キャンパスと千葉県柏市にある2つのキャンパスがあり、現在では入学から卒業までの4年間を九段キャンパスで過ごすことができます。