現代中国語の知識だけでは読めない、中国の「白話小説」とは?
中国語の「話し言葉」で書かれた物語
私たちが学校で習う漢文は、歴史書などで採用されている「書き言葉」で、時代によって多少の差はあるものの、訓読さえできれば、ある程度理解できるものとされています。一方、中国には、いわゆる中国語の「話し言葉」で書かれた、「白話小説(はくわしょうせつ)」と呼ばれる文学作品も数多く存在します。白話小説の多くは明や清の時代に書かれたもので、日本でもよく知られている『三国志演義』『西遊記』『水滸伝(すいこでん)』『金瓶梅(きんぺいばい)』など、有名な物語が残されています。
白話小説を読み解いていくことの面白さ
白話小説を読みこなすことは、現代中国語の知識をある程度持っている人にも難しいのではないでしょうか。中国語の話し言葉は、時代による語彙や文法の違いが非常に大きいため、中国人にとっても白話小説を読むことは、現代の日本人がいきなり『源氏物語』を読むようなものです。必要最小限の言葉で構成されることの多い書き言葉に比べて、話し言葉で書かれる白話の文章は、同じ内容でも2~3倍の長さになっていることも珍しくありません。白話小説を読み解く面白さは、話し言葉の時代による違いを楽しめることや、書き言葉の文章よりもふんだんに盛り込まれた遊びの部分や愉快な言い回しを味わうことにあります。例えば、驚いた様子を「びっくりしすぎて出した舌が引っ込まなくなった」と描いたり、ドキドキする様子を「心の中で子鹿が絶えず激突している」と言い表したりするなど、私たちには思いつかないようなユニークな表現がたくさん使われているのです。
講釈師の台本やメモから生まれた白話小説
白話小説は、昔の中国の街にいた講釈師(人の集まる所で物語をする人)が、道往く人々の関心を惹くためにさまざまな工夫を凝らして語ったものが基になったと言われています。昔の中国の人々の間で使われていた話し言葉によって語り継がれたこれらの物語には、そうして培われた深い魅力が秘められているのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。