「両利きの経営」で業績アップ! これをデータで実証すると
デジタル化の波に乗れたか
デジカメやスマホの普及により、フィルム写真の需要はぐっと減りました。フィルムの製造会社は、各社ともデジタル技術の開発を進めていましたが、デジタル化に対する経営方針の違いが大きく明暗を分けることになります。デジタル技術を磨きつつ、その技術を医療分野に転用したA社は、デジタル化の波に乗り業績を伸ばしました。一方、一時はデジタル技術で先行しながらも、安定していたフィルム事業に重きを置き続けたB社は倒産してしまいました。
両利きの経営とは
ビジネスにおいて、主力事業の改善を続けながら、その事業を生かした新規事業を立ち上げて、主力事業と新規事業を両立させるという「両利きの経営」が注目されています。かつての成長企業が新興勢力に敗れて低迷してしまうという「イノベーションのジレンマ」への処方箋とされる理論です。新規事業を立ち上げると、当初は主力事業の利益を食いつぶす形になるので、社内では衝突が起こりがちですが、優れた経営者はそれをうまくコントロールして社内の衝突を防ぎ、両利きの経営を成立させるのです。
ストーリーだけでなくデータの力も生かす
両利きの経営を行うと実際に会社の業績がどうなるのかを、統計手法を使って検証した研究があります。日本の上場企業のうち約500社の10年分の財務データを用いて、既存事業と新規事業への投資動向を分析したのです。その結果、既存事業だけでなく、新規事業への投資もバランスよく行った企業の業績は、新規事業に投資をしなかった会社よりも業績が伸びていました。また別の研究では、社長の任期が長い会社のほうが、短い会社よりも業績がよいというデータも示されました。任期が少なくとも5年以上だと、思い切った投資もでき、小規模な改善にとどまらず、改革まで実行できるというのです。このように、事例や戦略のストーリーに加えてデータサイエンスの知見を取り入れることで、理論的な説得力が増し、実際の経営に生かしやすくなるのです。
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二松学舎大学 国際政治経済学部 国際経営学科 准教授 小久保 欣哉 先生
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