文化遺産を保護するために必要な国際的ルールとは?

文化遺産を保護するために必要な国際的ルールとは?

文化遺産は誰のもの?

「文化遺産の保護」という言葉は普段何気なく用いられていますが、そもそも文化遺産をどのように扱うことが「保護」なのでしょうか。もともと屋外に建てられていた遺跡を、先進国の博物館内で大切に保管しておくことが望ましい保護なのでしょうか。それとも、仮に雨ざらしになって風化していくような保管状態だとしても、元からある場所に置いておくべきなのでしょうか。
1つの文化遺産に2つ以上の国がかかわっている場合、それぞれの立場によっても考え方は異なります。文化遺産の保護や返還を進めるにあたって、異なる国家の間にどのようなルールや制度があるべきなのかを模索していくことは、国際法研究の重要な役割のひとつです。

宇宙技術と文化遺産との関係

国家間で取り決められた国際法の中には、宇宙空間におけるさまざまな活動について規定した宇宙法も含まれています。実は宇宙技術と文化遺産の間には重要なかかわりがあります。例えば、深い森の中や高い山の上に遺跡のような文化遺産がある場合、地すべりなどの災害が起きた際に壊れてしまうかもしれません。そこで、人工衛星を使って得たデータや画像が文化遺産の監視、保全のために活用されているのです。このような宇宙技術を使った文化遺産の保護をより実効的なものとするにあたり、新たな国際的なルールや制度のあり方を、技術の発展ぶりを踏まえつつ、検討する必要があります。

月面の文化遺産

人類が残した文化遺産は地球上だけにとどまりません。数十年前の出来事ではありますが、アメリカのアポロ計画で月に降り立った宇宙飛行士が残した最初の足跡は、人類史の重要な文化遺産として未来へ伝える価値があるといえるでしょう。また、今後も宇宙開発が進展していくにつれて、月面の足跡のような文化遺産がほかにも生まれてくることが予想されます。宇宙開発にかかわる技術や資源について国際協力の枠組みが検討されているように、どの国の領土でもない宇宙空間の文化遺産保護のあり方についても、議論を始めるべき時が来ているのです。

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二松学舎大学 国際政治経済学部 国際政治経済学科 講師 大塚 敬子 先生

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メッセージ

国際法はさまざまな国の立場や価値観を反映しています。出来上がったルールから、考え方や立場の違い、国家間の対立の背景などを読み解いて、今後さらにどのようなルールが必要なのかを考えていくことは、今自分が暮らしている国際社会を見渡すことにもつながります。また、何かを学ぶ際には、1つのものに自分の関心を絞ることも重要ですが、ほかのものにも広く目を向けてみてください。今の自分の物差しでは関心が持てないと思うようなものでも、将来やりたいと思っていることに実はどこかでつながっているかもしれません。

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二松学舎大学は1877年、漢学者である三島中洲によって創設されました。漢学を通じて東洋の精神文化を学び日本人としてのアイデンティティを確立した、知的、道徳的な社会を支えるに足る人材の育成を目指しています。
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