アメリカ映画からアメリカの真の歴史や社会背景が見える!?
映画が表すメッセージ
映画は娯楽でもあり、フィクションでもあります。映画の研究には、映像論や技法論のほか、物語の構造に関する研究、社会情勢や政治的な意味を読み解く研究などがあります。これらを総合的に捉えつつ歴史学や心理学といった視点を加えると、映画はなんらかの形でメッセージを表していることが見えてきます。
長年シリーズ化されている映画の中で起こるいろいろな変化を検証すると、政治的な意図、人種差別やジェンダー、戦争についての考え方が制作された時代ごとにどう変わっていったのかが分かることもあります。
ゾンビはアメリカ先住民?
アメリカ映画によく登場するモチーフに「籠城」があります。例えばゾンビ映画では、生き残った人が大勢のゾンビに囲まれ、建物の中に籠城してその群れと戦うというパターンがあります。籠城は西部劇にもよく登場します。西部劇では、先住民に囲まれて砦(とりで)に立てこもった白人が戦います。ゾンビ映画と西部劇のこうした相似性に着目し、物語や表現方法も含めて検証すると、ゾンビは先住民に置き換えることができます。
国家形成の経緯が書かれているアメリカの歴史書には、先住民に対する暴力や虐殺は直接的には語られていません。しかし歴史の一次資料を検証すると、映画でのゾンビへの暴力は先住民に対して行った暴力と同じようなものであることがわかります。このように、映画の視覚的表現や物語性、映像技法的な分析と、アメリカ史における歴史学的な分析を統合して検証することで、隠された歴史が見えてくるのです。
映像から新しい知見を得る
映像は、見る人に心理的な影響を与えることもあります。実はあのナチスもうまく映像を活用していたと言われます。現在流れているCMやMVなどにもそういう側面があるかもしれません。だから映像は批判的に見なければいけない時もあるわけです。文字ではなく映像でしか語られない過去や、制作側の意図があります。それらを読み解き、解明することによって、これまでとは違う角度から新しい事実が見えてくるのです。
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