漢文ではわからない「古典中国語」の魅力とは
古典中国語は英語に近い言語
古典中国語は漢文として読み下せることから日本語に近い言語だというイメージがあるかもしれませんが、それは間違いです。英語を日本語に翻訳するときは、語順を変えたり、言葉を置き換えたり、翻訳できない言葉を無視したりして対応します。ところが、李白の詩を英語に翻訳するにはそんな面倒なことをする必要はありません。1つひとつの文字を英単語に置き換えるだけで翻訳できます。これは、古典中国語と英語の文法構造が近いからです。
文脈によって意味が特定される
そうは言いながら、古典中国語は英語との間に違いもあります。英語には動詞や名詞といった品詞がありますが、古典中国語にはありません。例えば、「君枕我枕」という文の場合、3つの翻訳が考えられます。それぞれ「君が枕は我が枕。」「君、枕す。我、枕す。」「君、我が枕に枕す。」となります。「枕」は、名詞にもなれば動詞にもなります。どれが正解かは、文脈によって決まります。さらに、文学作品を読解する場合、1つの作品だけでは深い読解ができないこともあります。作品の中の、ある文字や文字列が、過去の作品に含まれていて、それを参照しないと理解できない場合もあるのです。これを「典拠」と言います。文学作品は、時代を超えて「入れ子」構造を作っているのです。
漢文として読むと見えない古典中国語の本質
漢文で読むと古典中国語の本当の魅力は理解できません。漢文を読む場合、私たちは中国語の音では読みませんが、古典中国語は、音に出さないとそのよさはわからないのです。中国語の音は美しいとよく言われます。その理由は、韻律(言葉のリズム)があるからです。
中国語では、1つの音は1種類ではなく、4種類の高さがあります。また5音節(5文字)や7音節(7文字)といったひとかたまりで発音されます。さらに、その音節が繰り返されることで、心地よいリズムが生まれるのです。漢文では得られない、古典中国語の魅力を理解することが重要です。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
名古屋大学 文学部 中国語中国文学 准教授 田村 加代子 先生
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