糖尿病患者を救え! ブタからの膵島移植の実現に向けて

糖尿病患者を救え! ブタからの膵島移植の実現に向けて

ドナー不足の解決策として期待される「ブタ」

生活習慣と社会環境の変化に伴い糖尿病患者が急速に増加しています。糖尿病患者の中には、血糖値コントロールのために1日数回のインシュリン注射を継続しなければならない人も少なくありません。注射を不要とするための治療法として、脳死した別の人の膵臓(すいぞう)を移植する方法があります。しかし、膵臓を提供してくれる人(ドナー)が不足しているため、この手法はなかなか広まらないのが現状です。そこでブタの膵臓を人に移植する方法が研究されています。なぜブタかというと、膵臓の遺伝子が人間と最も似ている動物だからです。

拒否反応を避けるには

遺伝子が似ているとはいえ、ブタの膵臓を人の体内に入れるとすぐに拒否反応が起こります。それを避けるために、ブタの膵臓を細胞親和性のあるハイドロゲルで包んだ状態にして移植します。このハイドロゲルの網目構造のサイズが大きすぎると、中の細胞に酸素や栄養素が行き届かず、死滅してしまうという問題が生じます。どのサイズが最適かはまだ明らかになっておらず、サイズ制御技術の開発に世界中の研究者がしのぎを削っている状況です。また、年月がたつにつれてハイドロゲルが溶けてしまい、身体が拒否反応を起こし始めるという問題もあります。そこで、さらに薄い膜で覆う方法が検討されており、この膜に適した素材の開発も重要な研究テーマのひとつです。

多様な分野の専門家が結集

ブタからの膵島移植を実現するためには、移植方法以外にもさまざまな課題があります。例えば、移植用のブタの膵臓を用意するためには、高い衛生条件を満たした環境で、指定病原体を持たない医療用の豚を飼育しなければなりません。そして厚生労働省の認可を受け、糖尿病患者ができるだけ少ない負担で移植を受けられるような体制を整えるなど、いくつものハードルがあります。そのため実用化をめざすプロジェクトには、最初の計画段階から多様な分野の専門家が参画し、一体となって推進しているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

神戸大学 医学部 医療創成工学科(仮称) 教授 大谷 亨 先生

神戸大学 医学部 医療創成工学科(仮称) 教授 大谷 亨 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

医工学(医用工学)

先生が目指すSDGs

メッセージ

医療分野に関心があるけれど、医者ではなく、医学に関連した先端科学技術に興味をもつ人は少なからずいるでしょう。その中には、機械や化学をはじめとするものづくりが好きで、病院でみかける精密な医療機器に興味をもつ人もいるでしょう。医療機器学には、医療と工学はもちろんのこと、経営や経済の要素も含まれます。本学医学部医療創成工学科は、医療現場で医療機器開発の全体像を学べる日本初の学科です。医工学に強いモチベーションをもっているなら、ぜひ門戸をたたいてください。私たちの仲間になって共に歩みましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

神戸大学に関心を持ったあなたは

神戸大学は、国際都市神戸のもつ開放的な環境の中にあって、人間性・創造性・国際性・専門性を高める教育を行っています。
また、神戸大学では、人文・人間系、社会系、自然系、生命・医学系のいずれの学術分野においても世界トップレベルの学術研究を推進すると共に、世界に開かれた国際都市神戸に立地する大学として、 国際的で先端的な研究・教育の拠点になることを目指します。