「いいね!」の意味の違いをひもとく言語学

「いいね!」の意味の違いをひもとく言語学

同じ言葉でもイントネーションで異なる意味

SNSでよく使われる「いいね!」ですが、それを押す時、どんな意味の「いいね」なのでしょうか?
書き文字と違って声に出して伝える「言葉」は、言葉自体が持つ意味の多様性とイントネーションの違いによって、同じ単語を使っても伝わり方が変わります。言葉を研究する言語学には、「音韻論(おんいんろん)」「形態論」「統語論」「意味論」「語用論」という分野がありますが、その中でも言葉そのものの意味を研究する意味論と、イントネーションやアクセントを分析する音韻論を組み合わせてみると、どんな「いいね」が使われているのかが見えてきます。

音声の周波数を分析してデータ化

声に出す「いいね」という言葉は、面白い、同感、賛成という意味の「いいね!」と、「いいねぇ~」と語尾を伸ばして羨ましさやねたましさ、皮肉をこめた感じでいうのではニュアンスが異なります。私たちは文脈やイントネーションの違いによってなんとなく感覚で判断しています。
それを誰が見てもわかりやすい形に示したのが、音声を周波数で表す音響分析です。声の高さや低さ、抑揚の変化、アクセントがどこに置かれているかなど、声の周波数の変化からデータ化し、統計します。

意味の違いの可視化

中国語の“可”を取り上げた実験では、“可”を使った異なる会話文を27通り作り、それがどんな意味で使われているのか、またどのようなイントネーションで発話しているのかをネイティブスピーカーに話してもらいました。“可”は本来許可の意味で使われていた言葉ですが、現在では、「程度が高い、遂に、強調、意外性、丁寧な命令、疑問、反駁(はんばく)、対比」などとても広い意味を持つ言葉です。実験の結果、「遂に」という意味を表すときのみ、音の長さが長くなることがわかりました。
このように、今まではなんとなく判断されていた言葉の意味を、データサイエンスで分析して数値化していくことで、可視化できるのが言語情報学の研究なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

お茶の水女子大学 共創工学部 文化情報工学科 教授 伊藤 さとみ 先生

お茶の水女子大学 共創工学部 文化情報工学科 教授 伊藤 さとみ 先生

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言語学

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メッセージ

言語学は高校の授業科目にはない分野です。私たちは普段なにげなく言葉を発していますが、言葉そのものの意味を深掘りしたり、分析したりする機会はなかなかありません。言葉が場面によって持つ異なる意味やイントネーションの違いなど、言葉のいろいろな使い方をさまざまな角度から探求できるのが言語学です。音声データを採取して分析し、統計を取るなど、データサイエンスを使って「言葉」の科学を学んでみませんか?

先生への質問

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お茶の水女子大学に関心を持ったあなたは

日本における女性教育の先達であるお茶の水女子大学は、国際的状況のなかで、政治、経済、学術、文化をはじめ各界のオピニオン・リーダーとなりうる女性を育成するプログラムを世界に示しています。それは、「21世紀型お茶の水女子大学モデル」であり、本学が重視していることは次の三点です。
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