リハビリ装具やマッサージ器にも! 広がる人工筋肉の可能性

シンプル&軽量で大パワー
「人工筋肉」とは、筋肉のように伸縮するアクチュエータ(駆動装置)です。一番シンプルなものはメッシュ素材で覆われたゴムチューブでできていて、チューブに空気を出し入れすることで本当の筋肉のように伸縮します。しかも、人間の筋肉よりパワーがあり、0.1kg・直径数cmの軽くて細い人工筋肉が、20kgの重りを軽々と持ち上げられます。
原型はアメリカで1960年頃に開発されており、最近ではロボットや、「パワードスーツ」と呼ばれる人の動作や姿勢をアシストする衣類型の装置への応用が期待されています。しかし、人工筋肉は未完成の技術で、まだ普及していません。一番の欠点は壊れやすさです。ゴムチューブの表面は刺激やまさつに弱く、数万回の伸縮で穴が開いてしまいます。
毛を生やして耐久性をアップ!
2017年に特許が登録された「フユキン」は、この問題を解決した画期的な人工筋肉です。強さの秘密は「毛」です。静電気を使った植毛技術により、ゴムの表面から生えているかのように細かく毛をつけたことで、動物の皮膚を体毛が守っているのと同じ状態になり、刺激やまさつに強くなっています。フユキンは100万回以上の伸縮でも壊れないというデータが出ています。
助産師代わりのマッサージ
耐久性がアップしたフユキンは応用の可能性が広く、リハビリ装具など医療分野での研究も進んでいます。
マッサージ器に使おうというユニークなアイデアもあります。母乳の出をよくするために、助産師は産後の母親に乳房マッサージを行います。自宅でもそのマッサージを受けられるように開発されたのがフユキン製の「エンジェルリング」です。丸いリング状にしたフユキンにやわらかい突起がついていて、突起が助産師の指と同じ動きでマッサージをする仕組みで、胸のパッドに入れるだけで使えます。
フユキンを布に組み込むことはこれからの課題の一つです。実現すれば、将来、着るだけで使えるシャツ型のマッサージ器やリハビリ装具などが生まれるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報

畿央大学健康工学部 健康イノベーション学科(仮称) ※2026年4月新設予定 准教授冬木 正紀 先生
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