運動療法だけじゃない! 痛みを和らげる電気の力
強いと痛い、弱いと治療になる電気
冬にドアノブなどを触ると、パチッと静電気が発生します。この時の電流は瞬間的には数A(アンペア)に及ぶもと言われています。その1000分の1ほどの弱い電流を使って、病気やけがをした人のリハビリテーションを行う理学療法があります。理学療法といえば、多くの人は運動療法をイメージするでしょう。しかし、患部の痛みが強い場合はすぐに運動療法ができないため、痛みを和らげる前処置が必要です。その痛みを緩和する物理療法の1つが「電気刺激療法」なのです。
強さ・周波数・電極数の条件を変えてみると?
電気刺激の仕組みは、患部に+と-の電極を付けて、筋肉につながる末梢(まっしょう)神経に電気を流して痛みを和らげます。いくつかの検証の結果、痛みを緩和するには、弱い刺激よりもある程度強い刺激の方が、さらに取り付ける電極は多い方が効果的だとわかりました。しかし、たくさんの電極を付けるのを嫌がる人もいるので、実際にリハビリテーションの現場で行うときは患者の声を聞くことが大切です。また1秒間に何回の刺激を与えるかという周波数を変えると、「マッサージのように感じる」「じーんとする」など、感じ方に違いが出ます。どちらが心地良いかにも患者によって個人差があることもわかりました。
刺激の入れ方を研究して効果をUP!
物理療法では、電気刺激以外に患部をホットパックなどで温める「温熱刺激」もあります。温熱療法で効果を出すには20分以上かかるため、そのあとにほかの運動療法などを行う時間がなくなるのが課題でした。そこで患部を温めながら運動療法を同時に行ったところ、短時間で同等の効果があることがわかりました。
電気や熱などのさまざまな刺激は、神経を伝わって最終的に脳で統合されます。つまりどこからどのように刺激を入れるかによって、痛みの感じ方も違ってきます。刺激の入れ方を研究することで、より効果の高い療法がこれから見つかることも考えられます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。