講義No.14318 医療技術

運動療法だけじゃない! 痛みを和らげる電気の力

運動療法だけじゃない! 痛みを和らげる電気の力

強いと痛い、弱いと治療になる電気

冬にドアノブなどを触ると、パチッと静電気が発生します。この時の電流は瞬間的には数A(アンペア)に及ぶもと言われています。その1000分の1ほどの弱い電流を使って、病気やけがをした人のリハビリテーションを行う理学療法があります。理学療法といえば、多くの人は運動療法をイメージするでしょう。しかし、患部の痛みが強い場合はすぐに運動療法ができないため、痛みを和らげる前処置が必要です。その痛みを緩和する物理療法の1つが「電気刺激療法」なのです。

強さ・周波数・電極数の条件を変えてみると?

電気刺激の仕組みは、患部に+と-の電極を付けて、筋肉につながる末梢(まっしょう)神経に電気を流して痛みを和らげます。いくつかの検証の結果、痛みを緩和するには、弱い刺激よりもある程度強い刺激の方が、さらに取り付ける電極は多い方が効果的だとわかりました。しかし、たくさんの電極を付けるのを嫌がる人もいるので、実際にリハビリテーションの現場で行うときは患者の声を聞くことが大切です。また1秒間に何回の刺激を与えるかという周波数を変えると、「マッサージのように感じる」「じーんとする」など、感じ方に違いが出ます。どちらが心地良いかにも患者によって個人差があることもわかりました。

刺激の入れ方を研究して効果をUP!

物理療法では、電気刺激以外に患部をホットパックなどで温める「温熱刺激」もあります。温熱療法で効果を出すには20分以上かかるため、そのあとにほかの運動療法などを行う時間がなくなるのが課題でした。そこで患部を温めながら運動療法を同時に行ったところ、短時間で同等の効果があることがわかりました。
電気や熱などのさまざまな刺激は、神経を伝わって最終的に脳で統合されます。つまりどこからどのように刺激を入れるかによって、痛みの感じ方も違ってきます。刺激の入れ方を研究することで、より効果の高い療法がこれから見つかることも考えられます。

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先生情報 / 大学情報

弘前大学 医学部 保健学科 理学療法学専攻 准教授 吉田 英樹 先生

弘前大学 医学部 保健学科 理学療法学専攻 准教授 吉田 英樹 先生

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リハビリテーション科学、病態神経科学

メッセージ

理学療法というと、運動するリハビリテーションのイメージが強いかもしれません。でも、実際は運動療法と物理療法の両分野があり、あなたにはどちらも使いこなせる理学療法士をめざしてほしいです。また理学療法士が働く医療現場では、チーム医療の一員として、あるいは患者さんとの関わりの中で、それぞれコミュニケーション能力が求められます。積極的に課外活動に参加したり、いろいろな人と関係を築いたり、高校生のうちからコミュニケ-ションの大切さを意識してみてください。

弘前大学に関心を持ったあなたは

弘前大学は、人文社会科学部、教育学部、医学部、理工学部および農学生命科学部の5学部からなる総合大学で、すべての学問の基礎的領域をカバーしています。
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