リハビリを「いつでも、どこでも見える化」するウェアラブルセンサ
理学療法の世界を変えるICTの波
「リハビリテーション」といえば、医療リハビリテーションを指すことが多いでしょう。近年はICT(情報通信技術)、AI(人工知能)分野のめざましい発達で、医療リハビリテーションにも最新技術を応用した機器やシステムが導入されています。なかでも事故やスポーツによるケガ、脳機能障害などでダメージを受けた体の動作能力回復をめざす「理学療法」の分野では、機器の小型化・高性能化により、今まではできなかったリハビリテーション的アプローチが可能になりつつあります。
ウェアラブルで手軽にモーション測定
そのひとつとして注目されるのが、ウェアラブルセンシング技術を使った「体に装着できる」センサです。患者さんの体の動きや状態の測定・分析は、リハビリテーション計画を立てる際の重要な情報になります。各部位の動きの加速度・傾き・方向などを細密に計測する「モーションセンサ」を小型化して体に装着することで、今まで測定できなかった家庭での生活時間帯や睡眠中の運動データを、手軽に収集・解析できるようになるのです。
生活のなかでデータを集める
出生前後の脳の損傷などが原因で発症する、脳性まひの子どもの例を考えてみましょう。脳性まひでは四肢や脊柱の筋肉がこわばり、運動困難、良い姿勢がとれない、食事や呼吸がうまくできない、歩行がしにくいなどの状態がみられます。関節の変形を進行させないためには、四肢の可動域や動き、筋肉の緊張の度合いなどを綿密に調べ、正しい姿勢に近づけるリハビリを行うことが重要です。ウェアラブルセンサを使えば病院のリハビリ室だけでなく、自宅にいる時や食事中、夜間にもデータ測定ができます。また、自宅でリハビリ器具を使用中にも測定ができるため、正しいリハビリ効果が出ているかの確認もできます。ウェアラブルセンサは、リハビリの時間・空間を拡大する、頼もしいサポーターとして期待されているのです。
参考資料
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関西医科大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 教授 佐藤 春彦 先生
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