講義No.10728 医療技術

リハビリを「いつでも、どこでも見える化」するウェアラブルセンサ

リハビリを「いつでも、どこでも見える化」するウェアラブルセンサ

理学療法の世界を変えるICTの波

「リハビリテーション」といえば、医療リハビリテーションを指すことが多いでしょう。近年はICT(情報通信技術)、AI(人工知能)分野のめざましい発達で、医療リハビリテーションにも最新技術を応用した機器やシステムが導入されています。なかでも事故やスポーツによるケガ、脳機能障害などでダメージを受けた体の動作能力回復をめざす「理学療法」の分野では、機器の小型化・高性能化により、今まではできなかったリハビリテーション的アプローチが可能になりつつあります。

ウェアラブルで手軽にモーション測定

そのひとつとして注目されるのが、ウェアラブルセンシング技術を使った「体に装着できる」センサです。患者さんの体の動きや状態の測定・分析は、リハビリテーション計画を立てる際の重要な情報になります。各部位の動きの加速度・傾き・方向などを細密に計測する「モーションセンサ」を小型化して体に装着することで、今まで測定できなかった家庭での生活時間帯や睡眠中の運動データを、手軽に収集・解析できるようになるのです。

生活のなかでデータを集める

出生前後の脳の損傷などが原因で発症する、脳性まひの子どもの例を考えてみましょう。脳性まひでは四肢や脊柱の筋肉がこわばり、運動困難、良い姿勢がとれない、食事や呼吸がうまくできない、歩行がしにくいなどの状態がみられます。関節の変形を進行させないためには、四肢の可動域や動き、筋肉の緊張の度合いなどを綿密に調べ、正しい姿勢に近づけるリハビリを行うことが重要です。ウェアラブルセンサを使えば病院のリハビリ室だけでなく、自宅にいる時や食事中、夜間にもデータ測定ができます。また、自宅でリハビリ器具を使用中にも測定ができるため、正しいリハビリ効果が出ているかの確認もできます。ウェアラブルセンサは、リハビリの時間・空間を拡大する、頼もしいサポーターとして期待されているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

関西医科大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 教授 佐藤 春彦 先生

関西医科大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 教授 佐藤 春彦 先生

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リハビリテーション科学、福祉工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

理学療法の分野では、身体機能を計測する機器や運動を補助する器具など多くの装置が使われており、それらはデジタル技術の進化でどんどん高性能化しています。しかしリハビリには機器だけでなく、患者さんを支援する「人」、すなわち理学療法士をはじめとする専門スタッフの存在が欠かせません。
理学療法士には人とのコミュニケーション力に加え、相手の心身の状態を感じ取る能力が必要です。あなたが理学療法士をめざすなら、理系の知識だけでなく、心理学、社会学などの文系の学問にも高い関心を持ってほしいです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

関西医科大学に関心を持ったあなたは

関西医科大学は大阪府枚方市に位置し、医学部・看護学部・リハビリテーション学部(理学療法学科、作業療法学科)を有する医療系複合大学です。急性期医療から在宅医療まで揃う附属医療機関を擁する強みを活かし、医療現場の実情に即したチーム医療を学修。3学部合同授業を通して各職種の役割を尊重・理解することで幅広い視野をもつ学生を育成します。
学内には最新の医療現場に対応した演習設備や機器も充実。臨床現場の実践に近い環境下で繰り返し演習することで、確かな技術はもちろん、状況に応じた判断力・対応力を養います。