ヒトの体を深部から効かせるには? コアトレーニングの研究開発

運動前のストレッチは逆効果?
ストレッチには、筋肉をゆっくり伸ばして保持する静的ストレッチと、体を動かしながら筋肉を伸縮させる動的ストレッチがあります。「走る前にアキレスけんを伸ばす」など、ウォーミングアップに静的ストレッチをしたことがあるかもしれませんが、実は静的ストレッチはけが予防にならず、パフォーマンスも下げてしまうことがわかっています。筋肉が伸び切ったゴムのような状態になり、縮みにくくなるからです。
ウォーミングアップによいのは、もも上げや肩回しのように筋肉を伸び縮みさせる動的ストレッチです。静的ストレッチは運動後、緊張した筋肉をリセットするクールダウンに適しています。
姿勢や呼吸法で変わる
スポーツ理学療法の分野では、アスリートのけが予防やパフォーマンス向上のために、筋トレやストレッチの効果を科学的に検証して、新しい方法を開発する研究が行われています。近年、注目されているのが深層筋(インナーマッスル)を鍛えるコアトレーニングです。よく行われる上体起こしやスクワットなどの筋トレは表層筋(アウターマッスル)に効きやすく、深層筋に効かせるには姿勢や呼吸法などを工夫する必要があります。
検証には、深層筋に針を刺し、筋電図をとって、筋トレの効果を調べる方法があります。例えばプランクは、うつぶせにした体を前腕とひじ、つま先で支えてキープするのが一般的ですが、つま先ではなくひざをつく姿勢にして、片腕を前に伸ばす体勢をとることで、深層筋に効くという結果が出ています。
関節の痛みの予防・改善に
コアトレーニングは、腰や肩、股関節などの痛みの予防・改善にも効果が期待できます。例えば腹横筋(ふくおうきん)のトレーニングは腰痛の改善につながることがわかっています。
深層筋の働きはまだ解明されていないことが多くあります。「股関節の痛み・変形の予防に小殿筋(しょうでんきん)のトレーニングが有効ではないか」など、さまざまな仮説のもとに研究が進められています。
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埼玉医科大学保健医療学部 理学療法学科 准教授大久保 雄 先生
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