46億年間に何があった? それは地層が教えてくれる
天体衝突が繰り返された地球
地球は誕生してから、何度も天体衝突を経験してきました。中でも6600万年前にメキシコのユカタン半島沖に衝突した隕石(いんせき)は、恐竜たちを絶滅させる原因となったことで有名です。しかし、ユカタン半島が突き出たメキシコ湾や、その周辺地域の生態系や自然環境が、どんな影響を被ったかについてはよくわかっていません。宇宙由来の隕石物質や、もともと地球にあった物質がどのようにまき散らされて大陸や海底といった地球表面にたまっていったのか、細かな動きを解明する研究は、今まさに進められているところです。
衝突からわかること
大きな隕石が落下すれば、衝突によってちりなどの物質がまき散らされる範囲も地球全体に及びます。それらは長い時間をかけて地層を形成します。岐阜県坂祝(さかほぎ)町の木曽川に露出していた2億1500万年前の地層には、現在のカナダで見られるクレーターを形成した天体衝突によってまき散らされた物質が含まれていました。当時、坂祝町の地層はまだ海の底でしたが、その地層の前後を調べると海洋プランクトンに明らかな変化が起こっていました。とても微細なプランクトンですが、食物連鎖の最下層の生物が大きく変わると、それをエサにする大きな生物にも何らかの影響が出たでしょう。また、検出された特徴的な元素の量から隕石の大きさの推定も可能です。
過去の地球を物語る地層
天体衝突が形成した地層を特定する手がかりとして、隕石に豊富に含まれる重金属元素があります。また、衝突時は非常に高温になるため、まき散らされる粒子の表面は溶けて球状になります。この2つをヒントに、世界中にある膨大な地層の候補の中から特定していきます。地球では、過去5億年の間に生物の大量絶滅が複数回起こっています。その絶滅の原因が天体衝突だったのか、あるいは別の理由かはまだまだ調査中です。隕石由来の元素や、生物・海洋環境などの指標となる元素など、地層から検出される量はごくわずかですが、それこそが地球の歩みを教えてくれるのです。
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九州大学 理学部 地球惑星科学科 助教 佐藤 峰南 先生
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