地形データを測定し、危険な場所を「見える化」する技術
災害時にどこを通って避難するか?
もしあなたが住む街で災害が起きたら、どのようなルートで避難場所に向かいますか? 西日本の太平洋沿岸を中心に甚大な被害が予想される「南海トラフ巨大地震」が、今後30年以内に70~80%の確率で発生すると言われています。この地震に備え、四国地方でも、国や行政が人命救助や緊急物資の輸送などを行う救援ルートを定める計画が立てられています。しかし、ルート上で土砂災害により崩れて通れない場所ができると、救援や復旧が遅れてしまうため、地盤が崩れる可能性がある場所をあらかじめ把握しておく必要があります。
地盤のゆるみの「見える化」
地盤の状態は、外側から見ただけではわかりません。一見、頑丈に見える山でも、岩盤が変形してもろくなり、崩れやすくなっている場合があります。このような地盤のゆるみを調べる方法の1つが、「リモートセンシング」です。ヘリコプターから地面に向けて電磁波を発して、「比抵抗」と呼ばれる電気抵抗率をセンサーで測定します。比抵抗の違いが岩盤の状態を表す指標となるので、これと地形情報のデータを組み合わせて、地盤の状態を探るのです。2016年の熊本地震により斜面が崩壊した場所について、地震前にこの方法で取られたデータを解析したところ、地盤がゆるんでいると判定された場所と、地震で崩れた場所とが一致しました。
地形のデータを防災対策に役立てる
また2014年、豪雨により大規模な土砂災害が起こった広島市の被災地を対象に、国土地理院が整備している標高データを用いて被災地の地形の特徴を地理情報システム(GIS)で調べたところ、水が集まりやすい谷筋に沿った場所ほど、住宅への被害が甚大であることがわかりました。
リモートセンシングで得られたデータや、研究機関が測定・公開している地形のデータを活用すれば、災害時に危険な場所をある程度推測でき、斜面が崩れることも考慮してトンネルを建設したり、う回ルートを設定したりする対策を取ることができるのです。
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香川大学 創造工学部 創造工学科 防災・危機管理コース 教授 野々村 敦子 先生
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