揺れの伝わりから地球の内部をスキャンする
地球は玉ねぎに似ている?
地球の内部は、玉ねぎのようにたくさんの層に分かれています。それぞれの層は、多様な状態の岩石により構成されていますが、詳しく調べたくても、地球のすべての地表を実際に掘り起こすわけにはいきません。手がかりのひとつは、内部の状態の違いで伝わり方が変わる地震などの揺れです。揺れの波がまっすぐ伝わろうとしても、層の境目では波が崩れて、揺れは複雑化していきます。揺れの伝わり方を解析すれば、地球の内部の様子が推測できるのです。幾度の災害を経て、日本には世界に類を見ないほど多くの地震計が設置されました。高密度な観測記録が得られることで、複雑な地震波の伝わり方が把握できるようになり、地球内部の解析が進んでいます。
仮想地球を揺らす
さらに、この解析結果を踏まえてスーパーコンピュータの中に仮想的な地球を作り、これまで地震が起きていない地点に仮想的な地震を起こすシミュレーションも行われています。地震を表す方程式をコンピュータの中で近似的に解くことで、地球上に揺れが広がっていく様子がわかるのです。このシミュレーションは、地球内部の解析だけでなく、地震速報への応用も考えられています。地震の揺れは秒速数kmというスピードで伝わりますが、現在のインターネットはそれより速く情報を伝達できます。揺れを感知した瞬間にシミュレーションを行い、その結果を揺れの伝わりを追い越して届けられれば、揺れる前に正確な地震情報を知ることができます。現在のスーパーコンピュータでも計算に時間がかかるため、まだ実用化には至りませんが、将来に向けて研究が進められています。
地球のCTスキャン
人類は、地球からおよそ48億kmも離れた冥王星の近くまで探査機を送り込んでいるにもかかわらず、足下の地球は、中心部まで約6300kmある深さの、たったの10kmほどしか掘り進めていません。揺れの解析は、医療のCTスキャンのように、目には見えない地球の内部を見せてくれるのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
弘前大学 理工学部 地球環境防災学科 教授 前田 拓人 先生
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