自動車の速度を落とす仕掛け「ハンプ」の役割

自動車の速度を落とす仕掛け「ハンプ」の役割

生活道路の交通安全

交通事故を減らすための取り組みは各地で行われています。交通量の多い大きな道路の事故多発地点では、対策が重点的に取られ、交通事故が減ってきている一方、住宅街の中の小さな生活道路は対策が遅れているのが現状です。
生活道路では大きな道路とは違った対策が必要です。例えば、歩道部分と車道部分が明確に分けられないような狭い道路で歩行者と車が共存するためには、車の速度を落とす仕掛けが考えられます。「ハンプ」は、道路の一部を凸形に隆起させ、通過する車両に振動を及ぼすことでスピードを緩めさせる構造物です。これまでにさまざまな形状のハンプが使われてきましたが、車の速度は遅くなっても、通過するときの振動や騒音に周辺住民が悩まされ、撤去に追い込まれた場所もありました。

副作用の少ないハンプ

現在は国土交通省でハンプの技術基準が制定され、それに従った副作用の少ないハンプが開発されています。2mかけて10cmの高さまで上がり、そこから2m以上の平坦部を経て、再び2mで元の高さまで戻ります。このハンプは時速30kmを超えた車を十分に減速させる効果があるものです。また高さ10cmの平坦部に横断歩道を設けると、横断する背の低い子どももドライバーから見えやすくなる、手押し車やベビーカーが歩道から段差がなく通れるなどの利点も見られました。また日本では、信号機のない横断歩道で歩行者がいても一時停止しないドライバーが非常に多く見られます。この点でも、ハンプの設置が一定の効果を生むという観測結果が出ています。

対策の進め方を考える

このような交通安全対策を望む地点は全国にたくさんありますが、一斉にすべての地点で工事をすることはできません。一定の優先順位を設ける制度が必要となるでしょう。また、車が走りにくくなることへの反対意見が出る可能性もあります。意見が対立したときに、どのように合意形成をするのかについても、今後研究を進める必要があります。

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埼玉大学 工学部 環境社会デザイン学科 准教授 小嶋 文 先生

埼玉大学 工学部 環境社会デザイン学科 准教授 小嶋 文 先生

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土木工学、交通計画

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メッセージ

あなたは将来やりたいことが決まっていますか? まだ文理選択の前だからとか、大学の進学先を選ぶのが先だから、などと思っているかもしれません。でも、自分のやりたいことって何だろうと高校生の時にしっかり考える時間をつくることはとても大切です。
この教科が得意だからという考えは一旦脇に置いて、本当に自分のやりたいことを考えてください。そのために苦手な教科を学ぶことが必要だとしても、やりたいことが早目にわかっていれば、勉強する時間が長く取れます。頑張れば、きっと克服できるはずです。

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