性別で働き方が決まる日本 その雇用制度を考える
性別の違いで固定される働き方
日本の雇用制度は、他の先進国と比べて性別による役割分業が強いことが特徴的です。簡単に言えば、男性は遅くまで必死に働き、女性は家事や育児、介護などをメインに行ない、それに支障がない範囲で働くことが求められます。そしてそれに合わせた税・社会保険制度にもなっています。男性・正社員の賃金水準は家族を含む生活を保障できるもの、女性・非正社員の賃金は家計補助的とみなされ非常に低いものです。現在の日本では、本人が望む・望まないにかかわらず性別の役割分業に適した制度が張り巡らされ、それに無理してでも合わせざるを得ない状況です。結果として少子化が進んでいます。
「仕事ができる」って?
一般的に、日本企業ではその人の職務遂行能力に基づいて賃金が支払われることが多く、必ずしも職務に対して賃金が支払われるわけではありません。問題なのは、その能力の定義がかなりあいまいになりやすいことです。例えば、職場で働く年数が長い人は、経験が豊富になるため賃金が徐々に上がっていきます。また、企業の命令に従って長時間労働ができる人のほうが能力が高いとみなされやすく、子育て中の時間的制約のある社員の評価が低くなることもあります。他方で若手社員の賃金水準は、職務に関係なく低いものからスタートするため、モチベーション低下にもつながりかねません。海外では、職務そのものに対して賃金が支払われており、職務の価値に釣り合わない給料の場合、改めるように指示が入ることもあり、差別なども可視化しやすいです。
一目でわかりにくい間接差別
わかりやすく男女で違う扱いをする「直接差別」とは違い、一目でわかりにくく間接的に差別が行なわれていることを「間接差別」と言います。2024年、日本で初めて裁判で間接差別が認定される判決がでました。男性で構成される総合職と女性で構成される一般職の間にある、社宅・住宅手当の格差は間接差別と判断されました。これは日本の雇用制度内の性差別の是正を考える上で、大きな変化と言えるでしょう。
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埼玉大学 経済学部 経済学科 准教授 秃 あや美 先生
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