ハードウェアは書き換え可能? 未来の「やわらかいコンピュータ」

ハードウェアは書き換え可能? 未来の「やわらかいコンピュータ」

やわらかいコンピュータ

一台のコンピュータで、Webサイトの閲覧や文章作成、動画編集などさまざまなことができます。こうした機能はコンピュータのなかのOSやアプリケーションといったソフトウェアが担っています。ソフトウェアのプログラムは自由に書き換えられますが、コンピュータを構成する電子回路=ハードウェアは、製造されたままの形で使われることがほとんどです。しかし、コンピュータにも得意・不得意分野があります。そこで、ユーザーの目的に応じて自由に書き換えられるハードウェアを使った「やわらかいコンピュータ」の研究開発が進められています。

FPGAの応用

書き換え可能なハードウェアの代表がFPGA(field-programmable gate array)です。ソフトウェアと同様に、ハードウェア記述言語という専門のコンピュータ言語を用いて、目的に応じた構造を持たせることができます。例えば、一般的なパソコンは多くの画像データを次々と解析していくリアルタイム画像処理を苦手としています。データを一度メモリに保存し、その後はコンピュータとメモリの間で頻繁にデータをやりとりするため、ロスが発生するのです。しかし、ハードウェアの方をデータの連続処理に特化した構造に書き換えれば、よりスピーディーな画像処理が可能になります。ほかにも高度な暗号の処理や、ロボットとの連携といった分野にも、FPGAの応用が期待されています。

実用化に向けて

近年では大手IT企業がFPGA事業に進出するなど、いよいよ実用化が現実味を帯びてきました。しかし、ソフトウェアに比べて、ハードウェア記述言語を操れるエンジニアの数が不足しており、ソフトウェアエンジニアもハードウェア設計ができるような仕組み作りが今後の課題といえます。急速な発展を遂げてきたコンピュータの世界は、現在はじめて頭打ちの時期を迎えつつあります。その停滞を解決するうえでも、「やわらかいコンピュータ」の開発に大きな期待が寄せられています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

長崎大学 情報データ科学部 情報データ科学科 インフォメーションサイエンスコース 教授(学部長) 柴田 裕一郎 先生

長崎大学 情報データ科学部 情報データ科学科 インフォメーションサイエンスコース 教授(学部長) 柴田 裕一郎 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

情報システム工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

自分自身のことを振り返ってみると、小中学生時代に触れたコンピュータプログラミングの経験が現在につながっていると思います。といっても当時はこれを仕事にしようとか、専門的に勉強しようという意識はまったくなく、ただ楽しいとか、もっと知りたいとかの好奇心や遊び心が大きかったと思います。
あなたも将来どのような道に進もうか悩むこともあると思いますが、それが仕事になるかどうかは一旦置いて、自分が好きなことや熱中できることにとことん打ち込んでみることが大切だと思います。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

長崎大学に関心を持ったあなたは

長崎大学は、出島を介した『勉学の地』としての誇りと『進取の精神』を受け継ぐとともに、宗教や科学における非人道的な負の遺産にも学び、人々が『平和』に共存する世界を実現するという積極的な意志の下に教育・研究を行います。そして、蓄積された『知』を時代や価値観を越えて継承し、人類を愛する豊かな心を育て、未来を拓く新しい科学を創造することによって、地域と国際社会の平和的発展に貢献します。