プラズマの力で、空気の流れを制御する新技術
流体を制御する研究
流線形をした新幹線の先頭車両など、飛行機や電車、自動車などの設計をする上で、空気など流体の流れについて研究する「流体工学」の知識はとても重要です。空気から受ける抵抗を減らす設計や材質を採用できれば、燃費を抑えることができるので省エネにつながりますし、空気の流れをより的確に制御できれば、騒音の低減や安全性の向上にもつながります。
プラズマが空気の流れを生み出す
流れの制御に含まれるさまざまな研究テーマの中で最近注目を集めているのが、「プラズマアクチュエータ」と呼ばれる装置の開発です。これは、コンデンサーに用いられる誘電体という直流の電気を通さない物質の薄いシートの表と裏に、非対称に銅などの薄い電極を貼ったものです。誘電体の材質はポリイミドやテフロンなどです。このプラズマアクチュエータの表と裏の電極に高い電圧を高い周期で印加すると、電極付近にプラズマが発生します。そのプラズマにより、表側の電極から裏側の電極がある方向に向かって、空気の流れが生まれます。
プラズマアクチュエータには「応答性が高いこと」「柔らかい材質で作れるために、曲面などにも取り付けられること」「非常に薄い構造で作れること」、そして「材料費が安価なこと」などさまざまなメリットがあります。動かすのに高電圧が必要なことや、プラズマアクチュエータ自体の耐久性などの課題はありますが、実用化に向けた研究が進んでいます。さらに、アクチュエーター自身の高性能化や安全性の研究も進みつつあります。
さまざまな分野への応用に期待
例えば、飛行機の翼の表面にプラズマアクチュエータを搭載すると、翼の表面を流れる気流をコントロールする装置として活用できると考えられています。また、飛行機のほかにも、新幹線、自動車、高層ビルの壁面などに利用すると、気流による騒音を軽減するのに役立つ可能性もあります。今までにない新しい種類の気流制御装置として、プラズマアクチュエータは今、大きな期待を集めているのです。
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