沖縄のアイデンティティーをめぐる政治

沖縄のアイデンティティーをめぐる政治

文化は政治とは無縁なのか

博物館や美術館にある展示物、これは政治とは関係のないものと考えるかもしれません。絵画や陶器、工芸品そのものは選挙権を持つなどして、政治に参加するわけではありません。その展示物の作者にしても、政治とは無関係に芸術を表現し、創造活動をしています。このように、文化は政治に拘束されないからこそ高い価値を創出し我々に「豊かさ」を実感させます。

成長と発展の代償

日本は19世紀の開国以来、めざましい成長を遂げました。近代国家形成のひとつのモデルとして、世界的に注目を集めました。国内では藩を廃して、県という制度を含める行政機構を設置することにより、統一した近代的な政治・経済体制を作り上げました。琉球王国はこの過程の中で沖縄県になり、日本の発展の一翼を担うはずでした。
沖縄では日本の時代を「大和ゆー(世)」、アメリカ統治時代を「アメリカゆー」と言いますが、この2つの言葉は日本とは異なる戦前・戦中および戦後の記憶を表します。経済成長による「豊かさ」も享受したと言われますが、その代償は戦争の犠牲と軍事基地であることも忘れるべきではないでしょう。

文化的アイデンティティーが政治の前提

文化として一括りにされるものの中で、際だって高い価値を付されているものがあります。例えば古事記や万葉集、琉球王国時代に編さんされた歌謡集「おもろさうし」などが挙げられます。これらの文学作品は私たちが日常的に用いる言葉の土台となったのです。このような言葉が受け継がれ、また時代とともに変化しながら日本の文化的なアイデンティティーを形成しました。近代日本は経済成長の手段として、言葉を統一し、沖縄における標準語教育を徹底させてきました。皮肉なことに、「豊かさ」を追求した結果、豊かな文化が刻み込まれた言葉をなくし、真の「豊かさ」から遠のいたのです。

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長崎大学 多文化社会学部 多文化社会学科 准教授 コンペル ラドミール 先生

長崎大学 多文化社会学部 多文化社会学科 准教授 コンペル ラドミール 先生

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政治学

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メッセージ

日本の大学進学率は、30年前は約2割でしたが、現在は5割に達しています。世界的に見ても上昇傾向です。ただ、先進国の中には9割以上の国もあり、日本は低い部類に入ります。知識というと、詰め込み教育の影響もあって、よいイメージを持たない人もいるかもしれません。しかし、現在のさまざまな仕事を見ると知識の競争になっており、自分で問題を発見して解決する能力がますます重要になっています。これは、大学でないとできない経験です。ぜひ、大学でいろいろなことに挑戦してほしいと思います。

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長崎大学は、出島を介した『勉学の地』としての誇りと『進取の精神』を受け継ぐとともに、宗教や科学における非人道的な負の遺産にも学び、人々が『平和』に共存する世界を実現するという積極的な意志の下に教育・研究を行います。そして、蓄積された『知』を時代や価値観を越えて継承し、人類を愛する豊かな心を育て、未来を拓く新しい科学を創造することによって、地域と国際社会の平和的発展に貢献します。