高出力レーザーを活用して「地上に存在しないもの」を生み出せ

高出力レーザーを活用して「地上に存在しないもの」を生み出せ

地上に存在しない超硬質ダイヤが作り出せるかも

地上に住む私たちには、常に1気圧の力がかかっています。では、はるかに大きい1000万気圧や1兆気圧の世界では、どんな現象が起こるのでしょうか。このような極限状態を、パワーレーザーによって作り出し、そこで起きる現象を理解し活用することで社会に役立つ研究が、進められています。
例えば、ダイヤモンドは隕石の衝突や地中深くの高温・高圧な環境で形成されますが、10万気圧の環境下では、炭素がダイヤモンドに変化します。1000万気圧にすると、太陽系外の惑星にしか存在しないような「スーパーダイヤモンド」になります。これを取り出すことができれば、このダイヤを使った切削加工技術などが飛躍的に進歩するはずです。さらに圧力を上げると、すべての原子は1つの波となり未知の物質状態になるといわれており、この研究の奥深さを示しています。

「ミクロ太陽」を作りエネルギーを得る

固体状態で1000万気圧以上の状態を作れる施設では、さらに温度が高く数億気圧という超高圧のプラズマ状態を作って太陽と似た核融合反応からエネルギーを取り出す研究も進められています。核融合からエネルギーを取り出せるようにするには、1秒間に何発もレーザーを発生させなければならないので、AI(人工知能)やIoT技術を活用してレーザー発生を制御する「スマートレーザー」も研究されています。

宇宙の謎を解き明かす

光の圧力が数100億気圧~1兆気圧になるようにレーザーの強さを上げるために、10⁻¹²秒以下というごくわずかな瞬間的な時間にエネルギーを閉じ込める「チャープパルス増幅」という最先端技術が用いられています。これを使ってブラックホール近辺の時空の歪みや、宇宙の起源に関係する真空の揺らぎに関する研究も進められようとしています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

大阪大学 工学部 電子情報工学科 電気電子工学科目 教授 兒玉 了祐 先生

大阪大学 工学部 電子情報工学科 電気電子工学科目 教授 兒玉 了祐 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

プラズマ科学、レーザー科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

松下電器(現パナソニック)創業者である松下幸之助氏は、「『できない』という答えはない」と叱咤(しった)し、社員を奮起させたそうです。「できない」と思うことは、自身の限界を自ら決めているようなものだからです。
私自身も、学生の時に大阪大学レーザー科学研究所を見学した際、当時の副センター長から「研究の限界は自分で作っているんだ」と言われた経験があります。今では私もまったく同意見で、特に10代のうちは、できるかできないかをあれこれ考えるより、まずチャレンジする気持ちを大切にしてほしいと思います。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大阪大学に関心を持ったあなたは

自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。