生き物の膨大なデータから生命の仕組みを解明する生命情報科学

生き物の膨大なデータから生命の仕組みを解明する生命情報科学

生物の計測データをコンピュータで処理

生命情報科学(バイオインフォマティクス)とは、生物に由来するデータ(情報)を、情報科学の技術を駆使して分析することで、生命現象を解き明かしていく学問です。生物の体内ではたらく様々な分子を計測する技術が進歩し、膨大な実験データを処理する必要が出てきました。例えば、生物の設計図となる「遺伝子」について、多くの研究者が有用遺伝子の探索や機能を解明するために研究しています。生物の遺伝子や遺伝子の情報をもとに作り出される分子には膨大な種類があり、コンピュータの活用が不可欠です。

膨大なゲノム情報から遺伝子を探せ!

遺伝子の本体となる物質はDNA(デオキシリボ核酸)です。DNAは4種類の塩基とよばれる物質が長く連なっています。この塩基の並びを「塩基配列」といいます。また、ある生物の塩基配列で表される遺伝情報の全体をゲノムといいます。例えば、人間の場合、ゲノムの文字列は約30億塩基にもなります。コンピュータを使うことで、こうした多数の遺伝情報から有用な知見を得ることで、生命科学は大きく進展しました。生物学(バイオ)と情報学(インフォマティクス)を融合させ、私たちの生活に役立つ知見を得ようとしているのが、生命情報科学なのです。

データが農業を変える

作物にももちろんゲノムがあり、種によってはヒトゲノムよりも巨大です。例えば、小麦の場合はゲノムサイズが約160億塩基であり、ヒトゲノムの5倍以上あります。小麦の根、葉、穂などの器官や、季節や天候などの環境条件や一日の時間帯などによってもはたらく遺伝子が異なり、品種ごとのゲノムの違いが品種の個性を生んでいます。現在、ゲノム情報だけでなく様々なデータが作物からも収集され、病気や環境ストレスに強い遺伝子を探すといった研究が行われています。作物の品種改良に役立つ遺伝子が見つかれば、作物の育種や栽培に大きく役立つかもしれないのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

長崎大学 情報データ科学部 情報データ科学科 データサイエンスコース 教授 持田 恵一 先生

長崎大学 情報データ科学部 情報データ科学科 データサイエンスコース 教授 持田 恵一 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

生命情報学、バイオインフォマティクス

先生が目指すSDGs

メッセージ

生命情報科学によって、日本の農業や医学が飛躍的に進化する。そんなムーブメントが目の前に来ています。例えば作物の栽培も、今後はコンピュータビジョンで成長データを分析し、その作物の成長に最適な条件下での自動化が進んでいくでしょう。
ただコンピュータをうまく扱うには、数学や統計学の基礎が大切です。さらに文献を読み、多様な人から情報を得るために、英語も必要でしょう。そして生命情報科学を学ぶことで、バイオの分野だけでなく、科学的な根拠に基づいた物事の判断や、意思決定ができるようにもなると思います。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

長崎大学に関心を持ったあなたは

長崎大学は、出島を介した『勉学の地』としての誇りと『進取の精神』を受け継ぐとともに、宗教や科学における非人道的な負の遺産にも学び、人々が『平和』に共存する世界を実現するという積極的な意志の下に教育・研究を行います。そして、蓄積された『知』を時代や価値観を越えて継承し、人類を愛する豊かな心を育て、未来を拓く新しい科学を創造することによって、地域と国際社会の平和的発展に貢献します。