がんの早期発見にもつながる「細胞診」とは何か
異常のある細胞を発見する検査
「細胞診」とは、人間の体の中にある細胞を採取して顕微鏡で観察し、がん細胞やがん細胞になる兆候のある細胞など、異常の見られる細胞を発見する検査のことです。がんの診断や早期発見における重要な検査の一つとなっています。1943年、ギリシャの医師ゲオルギオス・パパニコロウが発表した細胞診による「子宮頸(けい)がん診断法」を発端として現在に至るまで、さまざまな病気を発見するための診断法として研究が深められています。
子宮頸がんを早期に発見するために
子宮頸がんは「HPV(ヒトパピローマウイルス)」というウイルスが原因となって発症します。ウイルスによる感染から子宮頸がんの発症に至るまでの期間は5~10年程度ありますが、ウイルスに感染しているかどうかを早い段階で発見できれば、子宮の機能を保ったまま治療を施すことが可能です。その早期発見の鍵となるのが、ウイルスの有無をチェックするHPV検査と、細胞診です。日本ではまだ周知が不足していて受診率が低いのが課題ですが、これまでの所見の蓄積によってかなり高い確率での早期発見が可能になっています。HPVワクチン接種の周知とともに、今後の普及が期待されています。
人体の謎を解き明かす細胞診
女性の膣(ちつ)内には「デーデルライン桿(かん)菌」という乳酸菌が存在しており、それが環境を酸性に保つことによって体に悪い細菌の侵入や繁殖を防いでいます。デーデルライン桿菌は、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの作用によって粘膜から細胞が剥がれる際に放出されるグリコーゲンをエネルギー源にしています。年齢を重ねて閉経すると女性ホルモンの分泌が減り、デーデルライン桿菌も減るため、細菌の繁殖がどのように防がれているのかは謎でした。しかし最近の細胞診の手法による研究では、白血球の一種であるマクロファージが子宮頸部で増加していることが明らかになりました。細胞診の研究は、こうした人体の謎を解き明かす鍵にもなり得るのです。
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千葉科学大学 危機管理学部 保健医療学科 准教授 池上 喜久夫 先生
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