航空機の事故を防ぐために必要な「ABC」とは?
世界初のジェット旅客機の悲劇
世界で最初に就航した量産型のジェット旅客機は、イギリスのデ・ハビランド社が開発した「コメットMk.I」という機体でした。同機は1952年にロンドン〜ヨハネスブルク間に就航して以来、世界各地の路線で運航されるようになりました。しかし、1954年1月に英国海外航空781便が、同年4月には南アフリカ航空201便が立て続けに墜落してしまいました。
フェイルセーフという設計思想の誕生
墜落した2機に共通していたのは、機体の金属疲労による空中分解の痕跡でした。同機の開発時には機体内での与圧に対する耐久試験が行われていたのですが、その試験方法に欠陥があり、54,000回以上の飛行に耐えられると判断されていた機体が、わずか3,000回ほどで亀裂が生じてしまうものだったことが明らかになりました。
これらの事故は、世界各国での航空機の設計と耐久試験の方法が大きく見直されるきっかけとなりました。同時に、一部の部材が損傷しても、ほかの部材によって飛行を続けられるように設計する「フェイルセーフ」という設計思想の誕生にもつながったのです。
それでも起きてしまった航空事故
しかし、そうした改善によっても、防ぎ切れなかった事故がありました。例えば1981年8月に空中分解を起こした、台湾の遠東航空103便墜落事故です。日本の著名な作家が亡くなったことでも知られるこの墜落事故は、機体自体の設計ミスによるものではなく、機体の与圧隔壁の腐食が原因でした。定められたマニュアル通りに点検やさび止め剤の塗布などのメンテナンスが行われていなかったという、ヒューマンエラーによって起きてしまった事故だったのです。
日本の航空会社でよく言われている言葉に、「安全を保つためのABC」というものがあります。「(A)あたり前のことを(B)ばかみたいに(C)ちゃんとやる」。これは、航空の世界に限らず、あらゆる種類の危機管理に通じる理念だと言えます。
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